'12劇団東俳合同公演「真夏の夜の夢」(THEATRE1010)


9月15日(土)と、17日(月・祝)に、シアター1010で

'12劇団東俳合同公演「真夏の夜の夢」(知久晴美 演出)

を見た。


いずれも、B班の公演。15日はゲネプロで、17時30分開演。17日は、12時30分開演と、16時30分開演の2回公演。

上演時間は、約2時間(途中休憩10分を含む)。


真夏の夜の夢」というと、文庫で出ている翻訳戯曲を読んだことがあるが、ひとつひとつのセリフが長くてまどろっこしく感じたものである。この東俳版「真夏の夜の夢」では、そのあたりはすっきりリライトされて分かりやすくなっている。それでいて、原作の筋からは逸脱せずに、妖精の世界と、3組のカップルの結婚をめぐる貴族社会のお話、芝居を上演しようとする庶民(職人)たちという3つのストーリーがバランスよくえがかれ、パックを媒介にして交わる。2時間はあっという間に過ぎて、タイトルにたがわず、ひと夜の夢のような楽しさがあった。

原作の戯曲の順序とは変えて、最初に、アセンズの森の妖精たちのシーンを持って来ていて、パックの口上(客席へ向けてのセリフ)が締めくくるエピローグと合わせて、妖精が舞台の世界を司っている構造をより印象付ける場割になっていた。
シーンによって、うたやダンスが入るので、一部音楽劇仕立て。

ホリゾントに浮かぶ月が幻想的で、印象深い。


幼児からシルバー世代まで、幅広い年齢、経験の出演者が参加しているなかで、オベロンとタイタニヤ、ハーミヤとライサンダー、ヘレナとデミトリヤスといった、芯になる役々の若い俳優の演技がしっかりしていたことが、見どころにもなっていた。なかでは、平本亜夢さんのハーミヤ、内田菜々さんのヘレナに、ともに遜色ないヒロインらしさがあって、舞台の華になっていたのが、いい。

ヘレナがデミトリヤスを追いかけて来て、(デミトリヤスが自分を)「タコのように吸い寄せる」っていうセリフが、ウケた。駆け落ちの途中で迷って疲れたハーミヤとライサンダーが、森のなかで寝むところで、ハーミヤがライサンダーに「離れて」っていう、あのシーンが秀逸。さりげないようでいて、上手く演じないと、あれほどのおもしろさは出ないだろう。


小野緒芽ちゃんのパックがすばらしかった。上手いことはもう分かっているのだけれど、いたずら好きで憎めない、かわいい妖精というポジティブな役柄(クレジットのトップでもある)を、とても魅力的に演じていた。動きに軽みがあって、舞台でのたたずまいともども、パックの存在が場のトーンやテンポにもなっていたと思う。

また、最後に、芝居の幕を下ろすパックの「口上」が、セリフとしての出来映え以上に、舞台で演じる者としての気持ちがストレートに伝わる言葉になっていて、胸に響いた。このエピローグだけでもリピートして見たいくらい。

パックのセリフで、ライサンダーのことを「二枚目」といっていたのは、いい感じ。(最近は、二枚目という言葉が死語になりつつあるなどとも聞くけれど、芝居のなかでは活きていて欲しいもの) パックは、30分で地球を一周するといっていたが、これって、原作より速いじゃん!

小野緒芽ちゃんが、オベロンとタイタニヤの腕で逆上がりするのがかわいかったな。


かわいいといえば、増田あゆ葉ちゃん(クインスの子ども役の長女)は、かわいいね。この子を見るのは、明治座の舞台以来だったけれど、逸材かも…

タイタニヤの妖精たちの踊りがきれいで雰囲気があった。そのタイタニヤの妖精たちは、ロバ人間になったボトムとタイタニヤのシーンで、ひとりずつ役名を呼ばれたりもするのだが、オベロンの妖精たちはそれに較べると、しどころが少なくない?


今回は、2日間の公演本番の前に、ゲネプロの公開というのがあって、それに申し込んだおかげで、1回多く見られてとってもラッキーだった。

ゲネプロの客席は、関係者(別班のキャスト、研究生、出演者の家族など)を1階席左右のブロックと後方に入れて、招待者を7列目以降の中央ブロックに案内していた(それより前方の座席は空けてあった)。つまり、私のような一般応募者を、いわゆる良席に座らせてくれるという配席だった。

ゲネプロの日のロビーでは、もうプログラム(500円)を売っていたから、配役も確認出来たし、本番前に舞台の楽しみどころも分かって、有意義な時間だった。

ということで、ゲネプロも合わせて、B班を3ステージ見ることが出来たのだけれど、ある意味、ゲネプロがいちばんおもしろかったかも知れない。客席の雰囲気が本番の公演とは全然ちがうし、観客としての私にしても、普段の観劇とはちがう軽い緊張というかドキドキ感があった。いいものを見せてもらったなぁ、と思う。


本番の公演では、座席は当日指定で、昼の部は最前列で見られて、うれしかった!(なにしろ、シアター1010の1階1列というのは、たった8席しかないのである) 夜公演は、5列だったが上手側の端っこ。当日指定の座席は、連席で配席して行くから、順番が来たときのタイミングによって、思いがけず良席が回って来ることがある反面、1枚だと、端になる確率も高かったりする。


それにしても、小野緒芽ちゃんて、お芝居も上手だけど、文章も上手いよね。プログラムに掲載の挨拶文も、東俳のホームページの公演告知に出ていたコメント(出演者の声)も上手くて、感心してしまう。


なお、プログラムに告知されている2013年の自主公演は、(今年やった、座・さむらい公演や座・阿国公演ではなくて)従来どおりの青年劇場、レモン劇場を上演予定となっている。

終演後は、出口で、チラシ入りのクリアファイルを配っていたので、もらって来た。3回見たから、3つあって、けっこううれしい。

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