岸和田市文化財団ドキュメントブック 浪切ホール2002-2010


岸和田市文化財団ドキュメントブック
浪切ホール2002-2010
いま、ここ、から考える地域のこと 文化のこと

発行:財団法人 岸和田市文化財
発売:水曜社、定価2310円

http://www.bookdom.net/suiyosha/1200machiz/1245kishiwada.html

岸和田市文化財団は、指定管理者制度による公募で敗れた結果、2011年度からは民間の会社に同ホールの指定管理者の座を譲ることになり、岸和田市文化財団という財団法人そのものも解散することになった。

代わって指定管理者になった会社は、選考の段階で、管理運営費を1年当たり7000万円、5年間で3億5000万円安く請け負う金額を提示したのだという。

指定管理者制度の導入で、近年は、この浪切ホール以外にも、公共ホールの運営のために作られた外郭団体が、指定管理者の公募で民間の企業や団体に敗れて、その座を明け渡すという事態が起きている。

この本は、岸和田市の公共ホールである浪切ホールのオープン時から9年にわたって、ホールの管理・運営を行なって来た岸和田市文化財団と同ホールのあゆみ、課題をまとめたドキュメントブック。

浪切ホールと財団の来し方を総括するにとどまらず、同じ関西圏にある公共ホールで運営に携わっているひとたちによる座談会や、2011年4月からの浪切ホール新館長のインタビューが載っているのが面白く、読みどころでもある。この本に登場する数人に限っても、公共ホールの運営・管理の仕事をしているひとたちの経歴には興味深いものがある。

ただ、本の内容は概観的で、浪切ホールのこれまでに、具体的にどんな問題が起こり、それをどうクリアして行ったかなど、深く掘り下げている訳ではないので、ノンフィクション的な面白さではない。


浪切ホールにまつわる想い出として、上村吉太朗(和田祥太郎)くんの文章が載っており、また、浪切ホールについての市民座談会の出席者3人のうちのひとりが、その上村吉太朗くんの母・和田有美さんである。

上村吉太朗くんと歌舞伎との出会いは、祖父に連れられて、浪切ホールでの歌舞伎鑑賞教室へ出かけたことで、母方の祖父は上村吉弥丈と同級生だった。

浪切ホールは、(脇花道ではない)客席を通る花道を下手だけでなく、上手側にも設置出来るつくりになっていて、両花道が設置可能な公共ホールは他にないのではないか、とある。