中区民ミュージカル・横浜ガス燈物語 キリシタンの魔法 未来への扉2012


1月29日(日)は、横浜・関内ホール 大ホールで、

横浜開港153周年記念事業・ドラマが眠る街“横浜”
中区民ミュージカル・横浜ガス燈物語
キリシタンの魔法 未来への扉 2012

(脚本・演出・振付・作詞・美術:福島桂子、音楽監督・作曲・補詞:天野一平、原案:松永春)

を観劇。

レベルの高い、上質な市民ミュージカルが、ここにもひとつあることを目の当たりにした一日だった。


2010年6月の渋谷・コクーン歌舞伎「佐倉義民傳」(http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20100615/p1)に出演していた子役のひとりが、中区民ミュージカルの出演者だったと知り、いちど見てみたいと思っていた。この区民ミュージカルは、「中ミュー」というのが略称らしい。

湘南新宿ラインで横浜まで行き、京浜東北根岸線に乗り換えて、関内駅下車。会場の関内ホールは、神奈川方面の劇場、ホールのなかでは行きやすいルートである。


全席自由 一般1500円、中学生以下700円。

2回公演あって、1回目が、11時開演。2回目が、15時開演。

開演1時間前から整理券を配付するとのことで、1回目はその通りに整理券が配布されていたが、2回目は並んで開場を待ってそのまま入場。

1回目は、早くからロビー開場していて、整理券をもらうとそのまま入場出来、ロビーで客席開場を待っていた。客席への入場が、整理券の順。(客席は1階席のみ使用といっていたようだが、2回目も同じだったかは分からない)


無料配付の公演プログラムは、広告も多いが、カラーで、表紙込み32ページ。場ごとの出演者が分かるようになっているのが、親切。ただし、ダブルキャストの配役表示で、1回目と2回目の印が逆になっていた。正しくは、1回目が「☆」で、2回目が「★」であるはず。

1階客席前方の上手ブロックの位置が、ミュージシャンスペースになっていて、5人編成で生演奏。

上演時間は、場内アナウンスでは、一幕60分、休憩15分、二幕60分といっていたが、じっさいは、二幕が約80分かかっていて、トータルで、2時間25分。

(この上演時間は、これまでに私が見た、いわゆる市民ミュージカルのなかでは、もっとも長いと思う)


「横浜ガス燈物語 キリシタンの魔法 未来への扉2012」は、横浜の発展に大きく寄与した実在の人物で、易経による占いでも知られる高島嘉衛門(高島嘉右衛門)の半生を、ファンタジックな味付けでミュージカルに仕立てたもの。

江戸から横浜の地へやって来た商人・嘉衛門が、安政地震を予言するところから物語がはじまり、嘉衛門の事業家としての歩みを、近代横浜の発展とともにえがく。2008年に、「横濱ガス燈物語 キリシタンの魔法 未来への扉」として上演された作品の再演のようである。
市民(区民)ミュージカルらしく、題材は、ご当地ものだ。

事業家としての事績と同時に、獄中生活を経験したり、予言者や占い師としての顔を持つなど、高島嘉衛門の人生には、ドラマの主人公らしい振幅と、理屈では割り切れない不可思議な部分があるようだ。

地震予知をきっかけに予言者扱い。→大地震前からの材木買い占めによる儲けと世間からの誹謗。→外国人との貨幣取引の不正から投獄される。→獄中での易経の研究で占い師として名を成す。→出所後はホテル建設やガス会社の設立など事業を次々成功させ政界の要人の知遇も得るが、妻を失う。

というのが、おおまかな流れだが、この舞台では、嘉衛門の予知能力の裏には「ノップ」という精霊たちとの交流があり、易経に基づく占い師としての名声の影には易の精霊たちの存在があったとして、いかにもミュージカルらしいファンタジックな設定を施し、区民キャストの子どもたちを活躍させていた。

事業家としての成功と引き換えに、精霊たちの姿は見えなくなって行き、キリシタンの魔法と呼ばれたガス燈に明るい光が灯るなか、嘉衛門の妻は息を引きとる。人物評にも毀誉褒貶があるためか、高島嘉衛門を主人公としたこのミュージカルは、なかなか辛口な味わいでもあるのが興味深いところ。


主役の高島嘉衛門には、プロの俳優(川本昭彦)を起用し、周囲を区民キャストが固めるという布陣。

ゲストのプロを含めた出演者は、68名。このうち、小学生が22人、中〜高校生が8人。親子、きょうだいでの参加も多い様子。

大人の人数の多さに加えて、大人の女性キャストに上手いひとが目立つのがこの区民カンパニーの特徴のひとつといえるだろう。なかでも、「おみつ」「とめ」「キネフラ夫人」の3人は印象的。


子どもキャストでは、「りつ」という役を演っていた海歩(のあ)ちゃんて子が、かわいかったな。ノップのときのうたも上手くて。[補記] この子は、子役の北村海歩ちゃんなのだね。かわいいはず。

「ゆずこ」のふたりも、かわいかった。それから、「かずこ」と「みつこ」の姉妹(は、ホントの姉妹かな)も。プログラムには「町の子」「子」としか書かれてないけれど、劇中のセリフで、かずこ、みつこと呼ばれていた。

それにしても、ノップと町の子を演っていた子どもたちは、何回着替えたのだろう。和・洋の異なるいでたちの二役で、交互に出番があるから、衣裳替えだけでけっこういそがしそう。


二幕で、9人の易の精霊たちが現れて踊るシーンが、よかったな。2回公演とも、セリフがきれいに揃っていた。ああいうセリフって、プロの役者でもズレたりするものなのに、ぴったり揃っていたことで、精霊らしさを感じさせた。

4枚の大きな移動式衝立を動かしながら、場面を動かす手法が、かつての音楽座の舞台を連想させた。