'11劇団東俳紅少女隊「オズの魔法使い」


12月23日(金・祝)、24日(土)に、

'11劇団東俳紅少女隊「オズの魔法使い

を観劇。

これは、おもしろかった。もしかしたら、2011年に見た舞台で、いちばん楽しかったかも。

オープニングの出演者たちのうたが、とても印象的だったし、続くプロローグから、一気に、物語の世界に惹き込まれて、見ごたえ満点!


上演時間は、1時間30分。

チラシに載っている場割では、二幕構成であるが、休憩なしでの上演。(休憩を10分入れれば、ちょうどレモン劇場と同じくらいの上演時間になる訳だが、会場の座席環境を考えると、休憩はないほうがいいと思う)


掲示されていた配役変更からすると、出演者(小学生以上の女の子ばかり)は、29人だったようだ。西の魔女ガルチの家来4人が、3人になるシーンがあったのは、ひとりがオズ大王との二役になっていたからかな。

レモン劇場のように音楽劇仕立てなのだろうと予想していたら、まるっきりミュージカルなつくりになっていた(ミュージカルというよりも本格的な音楽劇というほうが舞台の雰囲気には合っていそうだが)。


なんといっても、小島一華ちゃんのトートー=犬の役が、あまりにもかわいかった。あの衣裳のはまりっぷりといい、表情の豊かさといい、身体をいっぱいに使った演技といい、常識を遥かに超越したレベルのかわいさ。正面を向いたときの目に、ひとの気持ちを吸い込むような独得な感じがあるのも、すごかった!

トートーは、父親が土佐犬で、母親が紀州犬なのだって(笑)。いきなり関西弁でしゃべり出したのが、おもしろかったね(当然、しゃべるだろうとは思っていても)。

小島一華ちゃんは、まちがいなく、今年(2011年)いちばん活躍した子役だと思う。(「ゾロ ザ・ミュージカル」「MITSUKO」「細雪」と大舞台に続けて出演して、いずれも、東京公演だけでなく、他都市の大劇場やツアー公演があった) トートーには、そんな旬の子役ならではの輝きが満ちていて、まぶしいくらいだった。
観客が間近にいる小さな舞台で、犬の役をあれだけ見事に演じるというのは、腕がたしかな証拠。


三井桃子ちゃんのドロシーも、すばらしい。主役らしい雰囲気に加えて、目に力があったし、口跡もよくって。三井桃子ちゃんといえば、「ボビスタ的社会科見学」がいまだ記憶に新しいのだが、その頃から較べるとずい分大人びて、もう子役というイメージからは脱した感じ。

マンチキンの市長の、峯晴香ちゃんもかわいかったな。


ドロシーとトートーが、エメラルドの都を目指す途中に出会う、脳みそが欲しいかかし、心が欲しいブリキ、勇気が欲しいライオン。この3役がまた揃って上手いので、主演のふたり+3人のメインキャストチームに、ストーリーの展開を牽引して行く存在感があった。(ここだけの話、私は、ライオンさんに惹かれた)


エメラルドの門番も、すごかった。全体のなかのポジションとしてはコメディリリーフ。ハイテンションでしゃべってうたう役どころで、小野緒芽ちゃんと山口詩織ちゃんがコンビになっているのだけれど、あれだけ合わせるのからして、難易度が高そう。それに、幕の操作を受け持っていたり、看板(あれは字が最後まで読めないよ…)の出し入れもある。

小野緒芽ちゃんは、相変わらずかわいいし、コミカルな役が見られて新鮮だったが、山口詩織ちゃんの上手さにもびっくり。山口詩織ちゃんて、動きやセリフがきっぱりしていて、行儀のいい芝居をする。(こんな上手い子がいるなんて、劇団東俳も奥が深いな…)

エメラルドの門番コンビがドロシーたちに出した問題は、子どもたちの間では、けっこう知られているなぞなぞなのかな。(私は初耳だったけど)

大きな音でも耳をふさぐが、小さな音でも鼻をふさぐものは・・・「おなら」って、あれ、たまたまライオンが屁をこいただけだったし(笑)、次のなぞなぞの、カラスやスズメが嫌いなお菓子だっけ?・・・が、「かかし」っていうのも、答えをいった訳ではなかったのに、当たっちゃったし、
ドロシーちゃんが好きなケーキの問題。食べると安心するケーキは、何・・・で、「ホットケーキ」と答えるのは客席の子だし(って、あれは仕込みなんかじゃないよね)、

考えてみると、結局、ドロシーちゃんご一行様は「なまむぎなまごめなまたまご」といっただけで通ったのか。

ところで、この門番コンビは、脇に控えているとき、小野緒芽ちゃんは、たとえば、かかしやライオンを相手にリアクションしたりして表情を出していたが、山口詩織ちゃんはほとんど無反応を保っていて、目立たないところで個性のちがいが窺えた。これは、演出だったのか、それとも、芝居の流れなかで出て来たり、キャストの演じ方に帰するものか。


それにしても、小スペースで演じられる、ナマの声によるうたやセリフを聴いていると、声のよさが、いかに演者としての魅力であるかを実感する。いい声、よく通るキャストのうたやセリフは、ダイレクトに心に響いて来る。


この東俳版「オズの魔法使い」は、入れ子型になっていて、いわゆる「夢落ち」なので、大枠としては、一般的に知られている映画「オズの魔法使」に似た構図であるが、ただ、ドロシーの「現実(カンザス)」と「夢のなかの世界(オズの国)」とで重なっている人物は、ドロシーと愛犬・トートーの他は、意地悪なガルチさん(=悪い魔女)だけで、それも、ガルチは「現実」の世界ではセリフにしか登場しないから、設定としてはシンプル。

オズの国でのストーリーが夢だったとすることで、異世界や非日常を体験することで主人公が成長し、もとの世界へ戻って来るという、少年少女(や若者)を主役にしたファンタジーノベルやミュージカルの常套を踏まえているし、犬のトートーが、言葉をしゃべっていたのはドロシーの夢だったからだ、とすんなり納得させる結末をも兼ねていて、いい按配。
エピローグ的なシーンに到って、竜巻で飛ばされて気を失っていたドロシーが目を醒ますまでは、ドロシーの夢だということは分からないようにつくられている。


劇団東俳の舞台って、レモン劇場を見たときも感じたことだけれど、同じパターンの繰り返しを上手く使う。繰り返しと見せて、ちょっと変化を付け、軽く観客の予想を外したり、同じ場を複数回出して、発端と結末を整合させたり、対照化したり。これが、おもしろいな。スペースの制約を逆手にとっている感じ。

この「オズの魔法使い」では、たとえば、ドロシーたちがエメラルドシティへ向かって進む度に、「♪黄色の道〜」という同じメロディーが何度も繰り返して使われる。あれだけリピートされても飽きるどころか、むしろ、見ていて気持ちが乗って来るのが、おもしろい。小スペースでのナマの舞台の効果だけでなく、やはりキャストに場を牽引する魅力があったのだろう。


♪ようこそ不思議な我が国へ
♪オズの都 エメラルド

のフレーズが、いつまでも耳に残る。