舞踊集団菊の会「カッチャ行かねかこの道を」(タワーホール船堀)


11月16日(水)は、タワーホール船堀で

舞踊集団菊の会公演
舞踊劇「カッチャ行かねかこの道を」
(作・演出:三隅治雄、舞踊構成・振付:畑道代、演技指導:小沢象)

を見た。

過去ログのこの(→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20111013/p1)公演である。

この日、2回公演あったうちの、午後2時30分開演の回。

某所に上演時間は、2時間とあったが、じっさいは、正味の上演時間が約2時間。途中休憩があって、終演は、4時44分頃だった。


定価(前売自由席)より1000円安いカンフェティ席のチケットでの観劇だったが、入場の際に短時間だが足止めされた。もぎりのひとが、セブン-イレブン発券のチケットのことを知らなかったらしく、確認のために待たされた。たいした時間ではないが、後ろに並んでいるひともいたし、気持ちのいいものではない。いかにも、お呼びでない客という感じである。

最近は、カンフェティにチケットを出したり、ゲッティのシステムを導入するカンパニーが増えて来たが、もともと主催者や関係者ルートでの手売りチケットばかりだったカンパニーの場合、セブン-イレブン発券のチケットを持った客が現れると、もぎりの担当者が知らずに戸惑うケースがある。今年の1月に、やはりカンフェティで買ったチケットで、浅香光代公演へ行ったときも、同じように入り口でしばしの足止めを経験した。

票券の担当者は、新しい観客の獲得や、コンビニ発券の便利さからカンフェティの利用を考えるのだろうが、思ったようにはチケットが動かずに、結局、従来の手売りルートのお客さんばかりだとこんなことが起きるのかな?

コンビニ発券のチケットを持って現れた第一号が、たまたま私だったのかも知れないが、入り口で、このチケットは何だろう?ともぎりのひとに疑われたのでは、入場前から観劇意欲は減退である。たとえ、舞台が面白かったとしても、もういちど見に行こうという気にはなれない。私のような一見の客は、カンパニーには何の義理もないけれど、純粋に舞台を楽しみに来ているから、面白ければリピートする可能性もあるのだが…。


昭和9年、冷害にあえぐ岩手県北上市豪農、畠山家の母堂・マツ(江口紀子)は、倅が早死に嫁は離縁し、跡取りの幼い孫・長太郎(子役=鶴岡正泰・竹田正晴のダブルキャスト)が長ずるまでの間、姪で養女にしている佐枝(土屋明日香)に婿・留吉(飯田栄志)を迎えて中継ぎ養子とすることにした。

そんなふたりの婚礼の日、佐枝は、女郎屋へ売られて行く若い母親から赤ん坊を託される。新婚の養子夫婦は、血のつながらない男の子を健作と名付けて育てはじめる。

義母のマツには頭が上がらず、頼りなさから小作人たちからも馬鹿にされる留吉は、やるせない思いを故郷に伝わる剣舞と笛を吹くことでまぎらわせていたが、その舞と音色が、妻の佐枝や小作人たちの心を掴み、ともに舞うことで絆を結んで行く。

そして数年、健作(子役=山崎大樹)も物心つく年となった頃、学校に通うため土地を離れていた跡取りの長太郎(中村輝幸)がいちだんとわがままになって帰って来ると、健作が捨て子だったと口走ったことから、ひと波乱。佐枝と留吉は、いまや村の財産にもなった剣舞を健作に伝えることで、親子の絆を取り戻す。と、ここまでが、第一幕。


素人目にも技術の高さが窺える舞踊シーンがすばらしいのだが、それにも増して、メインキャストの多くが演技も達者で、芝居としてもしっかり創られている。第一幕のテンポのよさと構成の妙は、見ごたえ充分なおもしろさ。なかでも、第一幕最後の剣舞は圧巻で、深い感動にいざなわれる。

ただ、留吉の出征から戦死の報、戦後の農地解放による畠山家の没落とマツの死を経て、長太郎と成長した健作(池原和樹)の和解までをえがく第二幕は、いささか筋を急ぎ過ぎな印象。上演時間をあまり長くは出来ないのかも知れないが、せっかく剣舞が生んだ人々の絆なのだから、ラストの長太郎と健作の和解劇も、ふたりが剣舞を継承するかたちで、踊りのなかに昇華して見せて欲しかったとも思う。


第二幕では、行商をはじめた佐枝が反物を担いで客席へ下りて来る演出があり、反物をひとつ「1000円」でお客さんに売っていた。ひとりが買ったら、手を挙げるひとが続いたので、限定3名様といっていたが、この客席行商は、毎回あるのかな?


この舞台を見て、農村で伝えられて来た民舞とか民謡というものが、貧しい土地で厳しい労作の日々を送る人々にとっての、娯楽であり、なぐさめであり、行き場のない思いを発散する方法、表現の手段であったのだということが、なるほどと実感出来た。そういう意味でも、よく出来た舞台だと思った。


「カッチャ行かねかこの道を」は、三十数年前に初演され、断続的に再演が重ねられて来たというが、私は、菊の会というカンパニー名自体、今回、はじめて知った。公演を行なっている地域には舞踊教室があるようだから、そうしたルートでの集客がメインなのだろうが、一般的にはどの程度知られてるのだろう。

この「カッチャ行かねかこの道を」にしても、内容からすれば、舞踊公演の範疇にとどまらず、もっと広く注目を集めてもよさそうなものだが…


なお、プログラムやチラシに使われている親子3人の写真は、三芳町立歴史民俗資料館(http://www.jade.dti.ne.jp/~miyoshir/)の古民家で撮影されたものらしい。


「カッチャ行かねかこの道を」のあとは、午後7時から、調布市文化会館たづくり くすのきホールでの「調布の星コンサート6 寺内詩織」へ向かったが、タワーホール船堀(大ホール)は、くすのきホールと似たような規模のホールであった。