眠狂四郎無頼控(日生劇場)


5月25日(火)に、日生劇場

NEMURI×GACKT PROJECT
眠狂四郎無頼控

を観劇。

眠狂四郎無頼控」は、5月のこの日生劇場公演からはじまり、今秋から来年1月にかけて、大阪新歌舞伎座中日劇場福岡サンパレスホール、札幌・ニトリ文化ホール、広島市文化交流会館東京エレクトロンホール宮城での上演が決まっている。


普段の公演なら開場時間前からロビー開場するなどしていて、観劇前にはゆったりした気分も味わえる日生劇場なのに、今回は入場のための列がつくられ、それを案内・整理する人員までいるというものものしさ。仕方なく並んで入場すると、今度は、グッズ売り場に順番待ちのお客さんがずらりと。

幸い、オフィシャルパンフレット(3000円)、サウンドトラック、お菓子の購入だけならグッズ売り場とは別にそれ専用の売り場が設けられていて、こちらはグッズの物販に較べると、さほど待たずに買えた。パンフレットは、価格も高いが、サイズも持ち運びや収納に不便な大判。袋をくれるので、むき出しで持つ必要はなかったが。

クレジットを見るとなんだかややこしいのだが、パンフレットの冒頭には歌舞伎公演等と同様に、松竹の安孫子正専務取締役演劇本部長の「ご挨拶」が置かれていることからして、松竹の製作・主催でアイエスがコーディネートする公演だと受け取ってしまってもいいのだろう。


ロビー表示の上演時間は、3時間。12時30分開演の回だと、

一幕 12時30分〜1時55分、休憩 1時55分〜2時15分、二幕 2時15分〜3時30分

ただし、観劇日は少し遅れて開演して、3時36分頃の終演。上演時間は3時間だったが、掲出されていたタイムテーブルよりも、一幕は5分ぐらい長くかかり、二幕は5分ぐらい短かかったと思う。


チケット料金が『全席指定 プレミアム席30000円、SS席20000円、S席15000円、A席10000円』と高額なことにおどろかされるとともに、いったいどんなすごい舞台になるのかと思っていたが・・・映像や音楽には特徴があるものの、ストーリー等の芝居の内容に限れば、至極当たり前な、というか、あまりにも普通の商業演劇で、そのことにかえっておどろいた。

原作:柴田錬三郎
原案:エンドウミチスケ
音楽:SUGIZO
脚本・演出:金子良次
演出:市川正
原案監修:小山薫堂

ということで、「脚本」と「演出」を手がけたのは、大劇場の商業演劇ではおなじみの名前だから、舞台がそうなるのもしかりか。よくいえば、周囲の人物まできちんとえがかれていて、脇役にも見せ場が、敵役やベテランにはしどころがあるのだが、そのせいで、全体に、テンポが遅く、ストーリーの運びがゆるいせいで、とくに第一幕が長く感じる。また、GACKT=狂四郎を見せるための舞台を予想していた身には、その抑え気味な演技や、主役の見せ方には物足りなさも。

見どころは、結局、クライマックスの狂四郎の殺陣。終盤の大立ち回り(二刀も遣う)は手数も見せ場もたっぷりあったし、宿敵・三雲迅雷との対決ではついに円月殺法が披露されるのだが、そこに到るまでの「おあずけ」が、いかんせん長いのである。


映像を用いる舞台公演は最近では珍しくないが、この「眠狂四郎無頼控」では、シーンの背景としてはもちろんのこと、狂四郎の回想を映像で見せたり、狂四郎の姿を大きく映し出したり、また、効果音とともに効果映像的な使い方もするなど、舞台での実演と映像とを不可分のものとするべく創られていたようなのが、斬新だった。

背景に映像を使い、その映像が静止画ではなく動いていると、たとえば風が吹いていることが見える。と、その場面がにわかにリアルに感じられて来る。また、主人公の回想やイメージ、つまりインサイドを映像で見せる手法も、面白い。過去や記憶を、舞台で実演している「いま」とは別の時間として見せるとともに、舞台では表現しにくい登場人物の心象をセリフでなく伝えられるのだ。舞台に映像を組み込むことの是非はともかくとして、両者の融合は、旧来の「連鎖劇」などとは異なる新しいステージの可能性としてひらけていることを思わせた。


映像で、キャスト・スタッフのクレジットが、映画のエンドロールのように映し出されて、「完」となり、

カーテンコールは、なし。


キャスト

眠狂四郎GACKT
武部仙十郎:田中健
備前屋与兵衛:横内正
土方縫殿助:堤大二郎
石動一馬:徳山秀典
三雲迅雷:嶋田久作
金八:古堂たや
立川談亭:古本新乃輔
美保代:杏さゆり
石動彩乃:辰巳奈都子
文字若:南野陽子

葵陽之介 時代吉ニ郎 増島愛浩 鹿谷弥生 秦みずほ
太賀たけし 加藤照男 伊藤雅彦 佐藤英樹 齊藤裕亮 芦原由幸 津村雅之 今國雅彦 志村倫生 伊藤勇太 宮原沙樹 早乙女友貴 早乙女弘河 早乙女僚 早乙女拓也 早乙女祐也 早乙女大和 鈴花ゆい 鈴花玲奈 鈴花あたる 鈴花珠輝

ナレーション:大塚明夫、ヴァルデマル・サンチアゴ

映像出演:杏さゆり、松永輝人、藤巻碧、クリストファー・バティン


映像のみ出演のうち、狂四郎の子供時代をふたりが演じていて、藤巻碧が幼少で、松永輝人が少年。