新橋演舞場 五月花形歌舞伎 夜の部


5月9日(日)に、新橋演舞場 五月花形歌舞伎の夜の部を観劇。

この日は、新橋演舞場まで行くのに、早目に出て、牧阿佐美バレヱ団「くるみ割り人形」のDVD
 (→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20100411/p2)
をあちこち探したのだけれど、書店には見当たらず。新書館に直に注文するか、在庫のあるネットショップでないとダメなのか。(てっきり書店にあると思ったのに、バレエショップへ行くべきだったのかな…)
新国立劇場の「くるみ割り人形」なら大抵の書店にあるのだけれど、そっちは別に欲しくもない。

ということで、新橋演舞場に着く頃には、なんだか疲れてしまった。近くのコンビニで休憩時間に食べるエサ(サンドイッチとかおにぎり)を調達しようと立ち寄ると、棚は空いていて、残り物みたいなのしかないので、さらに疲労感が増す。

新橋演舞場 五月花形歌舞伎、夜の部は、4時30分開演。

ロビー表示の上演時間は、「熊谷陣屋」が1時間25分、幕間30分、「うかれ坊主」15分、幕間20分、歌舞伎十八番の内「助六由縁江戸桜」2時間15分。

2度目の幕あいの20分が中途半端だ。25分あれば、そばでも食えそうなのに…。(たとえば、「浮かれ坊主」をカットして、30分休憩を2回にしてくれるとありがたい)


さて、今月の「熊谷陣屋」を見ると、ああ、この芝居でご機嫌なのは、結局、義経だけなのだなぁ、とつくづく思わされる。それくらいに、義経(海老蔵)の爽やかな風姿。あんな制札で直実に理不尽なことを押し付けたあげくに、彼が出家するならしたで、自分の父母も供養しろだなんて、義経はいうことが図々し過ぎる。直実には、おめえの親のことなんて知らねえよ、とケツをまくって欲しいものだ。

熊谷直実(染五郎)は、パッと見たとき、染五郎っぽくないのが、新鮮。ただ、熊谷はじめ、相模(七之助)、藤の方(松也)、堤軍次(亀三郎)と周囲も若いので、設定を考えると、生々しい感じがして、いささか落ち着かない気分。そこがまた、しなくていい想像も出来て、面白くもあるのだが。

大体、直実・相模は不義の仲だったというが、法皇の胤をなした藤の方はふしだらじゃないの?相手が上つ方ならOK?

それはともかく、「熊谷陣屋」は、機会があれば、いちど藤の方の入り込みから見てみたい。と思ったのは、今月の「熊谷陣屋」は、冒頭で百姓たちが制札の話をする前に、藤の方の入り込みがあったことをしゃべっているからで、いつもとちょっとちがう印象。


松緑の「うかれ坊主」があって、そのあと「助六由縁江戸桜」。

通常2時間の「助六」より長い15分が、「水入り」の場面とそのための転換にかかる時間といったところ。

本舞台には揚巻(福助)、花川戸助六(海老蔵)が花道を引っ込んで幕が引かれるまでは普段の「助六」と同じ。そのあと、水入りの場へ替わるのに所作板が取り除かれるなど、転換に少しく間があるのだが、これが、ちょっとわくわくして来る微妙な時間として感じられた。

「水入り」は、白装束になった助六が花道から引返して、本舞台で意休(歌六)を待ち伏せると、朝顔仙平(亀寿)を交えて3人の立ち回りになる。助六は意休を討ち取り友切丸を手にするが、手が回って、天水桶のなかに身を隠す。水から上がると助六は気を失い、そこへ揚巻が駆けつけ介抱するところ、廓の若い者や鳶たちに囲まれる。が、揚巻が啖呵を切って庇い、彼らを退けると、助六は鳶たちが掛けたはしごに登り、屋根伝いに廓を後にしよう、というところで、幕となる。

斬られた朝顔仙平の首。あれは何だ?と思って、歌舞伎オン・ステージ「助六由縁江戸桜」を見たら、収載されている芸談に『朝顔仙平の切首がたそや行灯の上へのるのも古い型を用いたものです。』とあるから、むかしからのやり方のようだ。

朝日新聞夕刊(5/12付)の劇評(児玉竜一 筆)に、今回の新橋演舞場ではやっていないが、はしごを2階桟敷にかける演出があると書かれていた。同じ歌舞伎オン・ステージによると、梯子は東(舞台に向かって右側)の桟敷へ掛けるとある。

「水入り」で、天水桶に入るときに桶の底を抜くというのはこういうことかと、その使い方に、百聞は一見に如かずな面白さ。

筋書によると、助六が兄の白酒売(染五郎)に教えるあの喧嘩の売り方は、「こりゃまた組」がやっていたのだとある。…こりゃまた組ってのがいたんだ。へぇ〜!


助六」には、今月も坂東やゑ亮さんが廓の若い者で出演しているが、「水入り」の場にも廓の若い者が出て来るので、先月よりも出番が増えていて、見つけやすい。

須田あす美ちゃんは、先月の白玉付の禿から、揚巻付のしげりに出世した。「助六」の禿は白玉付だと、あいあいしかいわないが、揚巻付だとセリフもあるし、たよりもしげりも芝居の後半にも出番があっていい。

茶屋廻りは上手から出るのが金太で、花道からでるのが新次。


今月の新橋演舞場 花形歌舞伎は、まだあと、昼・夜をいちどずつ見る予定。

終演後に、地下鉄の駅へ歩いていて、ふと東劇ビルのほうを見たら、山下書店が(4/26に)オープンしたとあった。今度、演舞場へ行くときに、忘れずに寄ってみよう…