筆法伝授/弁天娘女男白浪


21日(日・祝)に、歌舞伎座さよなら公演 御名残三月大歌舞伎の第二部を見た。


強風で交通機関に影響が出ていたこの日、突風に見舞われながら、昼過ぎに最寄り駅に行くと、駅にはひとが溜まっていた。遅れは出ていたものの、あまり待たずに乗れたが幸い、しかし、車中はひどい混雑。

普通グリーン車に乗ったのに、そのグリーン車もデッキまでひとがあふれて、移動もままならない混み具合には、げんなり。上野に着くと、今度は山手線が止まっていたものだから、京浜東北線が混んでいて、またまたげんなり。が、山手線は間もなく動き出したので、すぐに空いているほうへ乗り換えて、ようやくホッとひと息。

歌舞伎座に着けば着いたで、玄関前には開場を待つひとがあふれて、ここでもひどい混みよう。3月、4月は三部制だから、ますます混雑は必至の様相。


切符引取機でチケットを引き出して、キラキラしている竹に雀の絵柄のチケット入れに収める。4月の絵柄よりも、3月のほうの絵が、いい。ということで、いっしょに出て来た「眠狂四郎無頼控」のチケットも、御名残三月大歌舞伎のチケット入れを取って入れちゃう。

だけど、この豪華(?)なチケット入れ、歌舞伎座さよなら公演のチラシはギリギリぴったり収まるのに、「眠狂四郎無頼控」のチラシはほんのちょっと横幅が広くて、入らない。つまり、他の公演のチラシは上手く収まらないように調整して作ってあるのか…。なかなか考えている。

今月の第二部は、幕間が1回。それも15分だから、開演前に舞台写真を見なければ、と思い、混雑をものともせずに、開場するとさっそく入場。すぐに入ったのに、早くも売店が混雑している様子だったのは・・・第一部から流連しているお客さんが少なくないからかな?


さて、御名残三月大歌舞伎 第二部は、「菅原伝授手習鑑 筆法伝授」と「弁天娘女男白浪」。

2時30分開演。休憩込みで、約2時間55分。この巡業並みの上演時間を、お手頃と思えるかどうかは、買った座席の等級次第かも知れない。


第二部に出演の子役は、すでに書いたとおり。
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20100302/p1
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20100321/p1(菅秀才)

はじめて見る「筆法伝授」が、予想以上におもしろい。

「菅原館門外の場」で、武部源蔵(梅玉)と梅王丸(歌昇)が、築地塀越しに菅秀才を受け渡ししたり、最後までしゃべらないのか?と思っていた子役が、梅王丸へ向けてひと声発するセリフなども、格別に面白い。武部源蔵の邪魔をする左中弁希世(東蔵)のウザさ加減も、格別。

最後が幕外になって、源蔵、戸浪(芝雀)、菅秀才が花道で、ひとくさりあっての引っ込みも面白い。でも、さっさと帰ったほうが安全だと思う私は、花道での芝居を、お約束として納得出来ないときがある。

物足りなかったのは、「門外」での、源蔵の立ち回り。刀捌きも冴えなくて、精彩なく、大勢を向こうに回しての見せ場にはほど遠かったが、あんなものなの?(そういえば、このひとは「高時」でも、天狗と絡む場面がひどくつまらなかったことを思い出した)


「弁天娘女男白浪」は、歌舞伎座さよなら公演らしい豪華な顔合わせ。安齋龍聖くんの丁稚 長松が、上手くて、とくに、南郷と絡むところの間がよかった。

「弁天娘女男白浪」というのは「浜松屋見世先の場」と「稲瀬川勢揃いの場」を上演する場合のタイトルだそうだが、「浜松屋」は「蔵前の場」がある上演をいちどでも見てしまうと、「蔵前」があったほうがいいのに、と思ってしまう。弁天小僧が浜松屋幸兵衛の子で、浜松屋の倅・宗之助の実父が日本駄右衛門だと分かる件りが、面白いのだ。

松屋の丁稚といえば、2年前に歌舞伎座で「白浪五人男」の通し上演があったときには、丁稚がふたりいて、「浜松屋見世先の場」の最後に、トンズラしようとした番頭をふたりの丁稚がとどめると、ひと芝居あって、「蔵前」へと転換する、というやり方だったけれど、機会があれば、あれを、また見てみたい。




(ところで、20日に見に行っていれば、歌舞伎座で平岡3姉妹を見ることが出来たのかなぁ…と思ったりもした、というのは、蛇足)