大奥(全国ツアー2008) 郡山市民文化センター 大ホール


5月14日(水)に、郡山市民文化センター 大ホールで、「大奥」全国ツアー公演を観劇。

出演の子役は、すでに書いた(http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080515/p1)とおりだが、再掲しておくと、

お雪: 小野緒芽・南雲有紗 (ダブルキャスト)



昨秋、明治座中日劇場で、それぞれ1か月公演が行なわれた「大奥」の全国巡演である。

当初、宮城県民会館(東京エレクトロンホール宮城)での観劇を計画したが、にゃんころげの容態のこともあり、白紙に戻した。その後、アクトシティ浜松でのツアー楽日を考えたが、すでにかなり後方(上階)の席しか取れず、また、新潟公演は完売、いったんツアー公演を見ることはあきらめかけたが、再度思い立って、3階席(通常のホールでは2階席の位置)に残席があった郡山公演に行くことにした。この「大奥」全国ツアーは、総じてチケットの売れ行きがよく、完売も多数出ているようだ。

郡山公演は、5月14日(水)夜、5月15日(木)昼の2公演あって、私が見たのは、14日のステージである。


往きは、宇都宮線の普通グリーン車で宇都宮までゆっくり本でも読みつつ、宇都宮で新幹線に乗り換えて郡山まで、と目論んだものの、いざとなると面倒になり、結局、往復とも大宮〜郡山間は新幹線に乗った。東北新幹線の片道が約1時間である。

郡山駅から会場のホールまでは歩いて20分はかからないか、ぐらい。これも往きはタクシー利用のつもりでいたが、時間に余裕があったので歩いた。ホールに着いて少しすると、雨が降り出したので、きわどいタイミングだった。終演時にはすでに雨は上がっていたが、けっこうな雨で、ひどく濡れたお客さんも見受けられた。ホールは入場を待つお客さんで長蛇の列が出来ていた。


ツアー公演のプログラムが、1000円。

郡山公演の上演時間は、『一幕65分、休憩20分、二幕80分』

主要キャストは明治座の舞台からそのままだが、大人のキャストは総数で6人減、子役は瀧山(浅野ゆう子)と直接絡むことになるお雪ひと役だけになって2役減ったことになる。

明治座では、2回の幕間がある三幕構成で、幕間時間を差し引いた正味の上演時間が、2時間55分くらいだった。
(2007年10月1日の所見→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20071002/p1)
それと比較すると、ツアー公演は正味で30分短くなっていて、二幕構成に直されている。

明治座では、おその(松尾れい子)が自害したところで第一幕が終わったが、このツアー公演は、明治座では第二幕の中盤、瀧山の前に家定(羽場裕一)の幻影が現れる場で、一幕が了となる。子役の登場はその次の場からだから、全国ツアーでは、お雪ちゃんの出番は第二幕の最初の場からとなった。

この舞台の子役は、瀧山が愛した13代将軍家定にそっくりな僧侶柳丈(羽場裕一2役)が引き取って育てている罪人の子たちという設定で、おそのの墓参に寺へやって来た瀧山が、転んでひざ下に傷をつくった女の子(これがお雪)の手当てをしてやったことで、柳丈と知り合うきっかけになるという役どころだ。

ツアー公演では子どもがお雪ひとりしか出ないが、その二幕最初の場では、お雪ちゃんは明治座とはちがって子守子の姿。赤ん坊(は、人形。歌舞伎でよく見るあれ)をおんぶして、おもちゃを手にあやす様子で出て来て、つまずいてこける、という演技。手当てをしてもらって、そのあと、柳丈に呼ばれて出て来て、瀧山にお礼をいう。

柳丈が捕らわれる場では、柳丈に駆け寄って役人に突き飛ばされたりして、曳かれて行く柳丈へお雪が泣きながら「和尚さまー」と何度か叫んで、照明が落ちる。


郡山市民文化センター 大ホールは、左右に花道(新宿コマ劇場のような花道のこと)があって、これを左右とも使う演出。
また、大奥スリーアミーゴス(鷲尾真知子山口香緒里久保田磨希)の1階客席通路からの登場あり。スリーアミーゴスによる幕前では、ご当地の名物・名産(郡山は、うす皮饅頭が名物らしい)をネタにするなどして、さしたることもない内容なのに芝居への導入、場のつなぎとしてなかなか面白く、客席を盛り上げる。明治座では、わざとらしい感じもした3人の幕前だが、今回はじつに効果的と思った。

上演時間の短縮に伴ってテンポアップした進行は、余分なものが削ぎ落とされて、かつ、主役が主役らしく引き立ち、明治座で見たよりもすっきりした娯楽劇の趣き。回り舞台はなくても、ホール公演のハンデを感じさせない展開で、好舞台だ。

ただ、さすがに30分も短くすると芝居の「こく」はやや薄れた印象。瀧山、将軍の生母である実成院(江波杏子)、皇女和宮(安達祐実)、瀧山の後継者とされる初島(中山忍)、この大奥の実力者4人の対立関係や感情の交錯が、明治座の舞台ほどには強調されず、そのためか、家茂(金子昇)逝去後の嫁・姑の和解や、江戸開城に到っての自害の止め合いが、もうひとつ感動につながりにくい気がした。

とはいえ、明治座の舞台から、具体的にどこをどう詰めたのか、子役の出演シーン以外はほとんど分からないくらいだから、とても上手く仕上げてある。全国ツアーの主催はフジテレビ系列の各局で、人気ドラマの実演版として、客入りのよさも含めて、大成功なのだろう。


カーテンコールでは、浅野ゆう子さんが不手際があったことを客席へ詫びていたが、これは、終幕近くで音響ミスがあったことをいっていたのだろうか。

最後に座長さんに促された安達祐実ちゃんが投げキスしたりして、カーテンコールが終わったのが、9時13分頃。


ツアー版演出での子役の変更点も見ることが出来たし、小野緒芽ちゃんが出演していたし、郡山まで出かけた価値のある舞台だった。(小野緒芽ちゃんは、とってもいいね!)