「二十四の瞳」からのメッセージ


少し前になるが、

澤宮優『「二十四の瞳」からのメッセージ」』(洋泉社、1700円税別)

を読んだ。

1954(昭和29)年公開の松竹映画「二十四の瞳」(木下恵介監督、高峰秀子主演)は、日本映画の名作として知られているが、その「二十四の瞳」について、大石先生の教え子として(あるいは先生の子ども役として)出演した当時の子役を中心に、映画製作や公開後の反響についてのエピソードを掘り起こして、同映画の魅力や意義に迫ったノンフィクション。

この映画の子役は、分教場時代の小学1年生役12人と、その子どもたちが成長しての本校時代を本当の兄弟・姉妹が演じていて(じっさいには、教え子12人のうちの11役と、大石先生の長男役が本当の兄弟・姉妹でキャスティングされた)、子役は、よく似た兄弟、姉妹(あるいは従兄弟でもいいが同姓であること)という条件で一般公募され、選ばれたという。

木下恵介監督は、素人や新人俳優を上手く使うことで定評があり、教え子たちが長じてからの青年時代の配役にも、映画のスタッフに俳優を兼任させたり、映画2作目だった田村高廣が起用されるなどした。

シナリオをもとに、撮影時の話やシーンのねらい、木下監督の演出手法を丹念にたどりながら、「二十四の瞳」がいまなお名作たり得る理由を探るとともに、作品と監督の再評価へとつなげて行く。

当時の子役たちへの取材を通じて、主演した高峰秀子という女優の輪郭、ひととなりも浮かび上がって来る。

私はこの映画は見たことがないが、それでも、とても面白く読める本である。

ただ、読了後に件の「二十四の瞳」を見てみたくなったかといえば・・・いまさら白黒の映画には気持ちが動かないというのが正直なところ。(たとえば、同じ松竹でも、2005年8月に日本テレビ終戦60年特別ドラマとして放送された「二十四の瞳」で、私は充分である)


ところで、『「二十四の瞳」からのメッセージ」』という本、私が持っているのは、2007年11月19日初版発行の奥付のものだが、冒頭が、こう書かれていて、びっくり。

 香川県小豆島は一六九・八六平方メートルの島で瀬戸内海では淡路島に次いで二番目に大きい島である。

『一六九・八六平方メートル』って、平方キロメートルのまちがいだよね。169.86㎡だと、ほとんど個人の住宅程度の面積だもの。・・・ちなみに、ずい分むかし、いちど小豆島に行ったことがあるが、船で渡って、島内はバスで移動した。