万太郎 松太郎 正太郎


みつわ会公演のことを書いていたら(http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20071226/p2)、しばらく前に、

大村彦次郎「万太郎 松太郎 正太郎 東京生まれの文人たち」
(筑摩書房、2500円税別)

を読んだことを思い出した。

久保田万太郎川口松太郎池波正太郎水上瀧太郎広津和郎、の5人に各章をあて、そのほかに著名作家たちを東京下町生まれ、東京山の手生まれと二章に分けて、作家のひととなりやエピソードをつづった、著者お得意の内容の一冊。

久保田万太郎の、その作風とは対照的な世俗的な実生活、女性関係や、肉親への冷淡さなどが意外であり、たびたび衝突したという最初の弟子、川口松太郎との師弟関係、万太郎と水上瀧太郎の交友とその後の対立など、著名ながら詳しく知らなかった作家の経歴や、交友関係をとても面白く読んだ。


この本のなかで、万太郎の弟子筋でもある、戸板康二についても書かれているが、一部を引くと、『二歳のとき母方の祖母で、戸板裁縫学校の創立者でもある戸板関子の養子となった。』とある。また、芝愛宕小学校時代には、『同級に六代目菊五郎の息子、のちの尾上梅幸がいた。』『戸板は劇評家になってからも、役者のいる楽屋には足を踏み入れなかった。梅幸とは幼な友達だから気楽に寄っても構わなかった筈なのに、自分の仕事と立場をわきまえて、きちんと一線を守った。戸板の潔癖な性分がそうさせた。

戸板康二というひとは、あの、女子高や短大で知られる、戸板学園創立者の孫にして養子だったのか!と。


などなど、興味深い記述の多い本でした。