オリジナルミュージカル「ぬまばあさんのうた」(関東国際高校演劇科卒業公演)


関東国際高等学校演劇科 第22期生卒業公演
オリジナルミュージカル「ぬまばあさんのうた」

(原作:岡田淳「ぬまばあさんのうた」、台本:長澄桃子、監修・演出・振付:長澄修、作曲:玉麻尚一)

を観劇。

12月13日(木)、14日(金)の両日、川口リリアメインホールで2ステージ上演された同校演劇科の第22回(22期生)卒業公演のうち、13日の舞台を見たので、以下、雑感。

同校演劇科の卒業公演を見るのは、11年ぶりのことだ。

無料だが、事前に申し込んだチケットで、全席指定。


3年生がキャスト、1、2年生がスタッフなのは、むかしと同じだが、キャストは、1ステージに28人全員が出演していた。2ステージあるので多くの役がダブルキャストになっているのだが、役替わりして2ステージとも出演するかたちのようである。
(今回の卒業生が28人とのことで、人数が少ないせいなのか、最近は全員が2ステージ出演することにしているのか、そのあたりは私には分からない)


パンフレットも無料配布。表紙込みで20ページ。白黒だが写真も掲載されていて、出演者も写真付き。(いま手もとにある12年前の同校演劇科の卒業公演パンフレットは、わら半紙に印刷して綴じたものだから、時代は確実に進んでいる)

ロビーには、原作者の紹介や、演劇科のあゆみ、活躍中の卒業生の紹介、配役表などの展示物。

13日の客席は、1、2階を使用。3階席は使われていなかった。


さて、オリジナルミュージカル「ぬまばあさんのうた」。

開演は、午後6時。じっさいは、6、7分過ぎてはじまり、アナウンスによれば、一幕、二幕とも60分、途中休憩20分。

観劇回は、カーテンコールにつづいて、キャスト(=卒業生。ぬまばあさん役の生徒さんが代表)からのあいさつ、原作者、演出、台本、作曲者の紹介もあって、終わったのが、午後8時34分頃だったから、休憩込みで、上演時間は、およそ2時間半。


原作は、こそあどの森の物語シリーズの1冊で、2006年1月に上梓されている。

第一幕では、こそあどの森やそこの人々など舞台となる世界の紹介があって、そのあと、キャンディーとクッキーという双子の女の子が「石読み」の少年スキッパーといっしょに「ぬまばあさん」という、うたにまでうたわれた怖いばあさまのところを訪れ、そこで、ぬまばあさんの料理を食べるに到るまで。

と、ここで、すでに「ぬまばあさん」と子どもたちとのエピソードはいったん完結してしまうのだが、「石読み」のスキッパーが、赤い石から読み取った過去の記憶、「ゆらの入り江の水の精」がぬまばあさんになったのはなぜかという、むかしむかしのいきさつが物語られて、その物語を子どもたちが、こそあどの森の大人たちに伝えるまでが、第二幕の展開になる。

この構成がなかなか効いていて、二幕での「謎解き」に観客の興味をつないでおいて、幕間になる。

第二幕は、赤い石とゆらの入り江の水の精にまつわる物語を、ダンス、うた、群読ふうの割り台詞を織り交ぜて、出演者のアンサンブルを結集して見せるシーンが、いい。ミュージカルにおいて「物語る」ということの手法のひとつを見た思いがし、醍醐味を感じた。

純粋にこの一作だけを見れば、ぬまばあさんの話とは直接絡まない、こそあどの森のキャラクターたちが、はたして必要なのかとの疑問を感じなくもないが、岡田淳作品を次々にオリジナルミュージカルとして創っている同校演劇科にとっては、きっと大事なキャラクターなのだろうし、また、3年間の成果の発表という意味では、生徒さんそれぞれに、役柄や、しどころがあってしかるべきなのだろう。

スキッパー、キャンディーとクッキーの3人が乗っていた船(ヨット)が、秀逸。演じながら、上手く動かすものである。




関東国際高校演劇科の卒業公演は、1990年代半ば頃には、川口リリアの恒例になっていて、当時は自由席で入場も自由だったこともあり、何度か出かけたことがあった。その頃は、演劇科と劇団四季との関係が深く、四季のファミリーミュージカルの台本と音楽を使って卒業公演が行なわれていた。客席のほとんどは関係者や進学を考える中学生などだが、なかには、私のような(当時の)四季ファン、ミュージカル好きが次代の主役候補を見つけに来たり、「その後」の成長した姿を見に来るファンがいたりもし、また、地元川口の方で公演を楽しみにしているひとがいたりと、私立高校の学校行事にしては、オープンな雰囲気があった。

無料だが入場にはあらかじめの申し込みが必要になって以降は、会場が川口リリアから他へ移り、また、卒業公演の演目も、同校演劇科のオリジナル作品が上演されるようになっていたが、・・・今年は、卒業公演の会場が川口リリアになったというので、久しぶりに足を運ぶ機会を得たという次第。

入場の際の生徒さんの「ごきげんよう」のあいさつはむかしと同じだったが(といっても、10年以上も前の頃と較べると薄味な印象で、かつては、「ごきげんよう」といわれると、どぎまぎしてしまうような独特な感じがあった)、終演後の出口で、お客さんにお花を配るというのは、やっていなかった。