「ロマンス」を観劇。


9月27日(木)に、世田谷パブリックシアターで、こまつ座シス・カンパニー公演「ロマンス」(作・井上ひさし、演出・栗山民也、音楽・宇野誠一郎)を観劇。

午後6時30分開演の公演で、ロビー表示の時間割は、一幕 1時間20分、幕間 15分、二幕 1時間25分。観劇回のじっさいの終演は、9時28分頃。


公演プログラム、1000円。ポスター(大)、700円。ポスター(小)、500円。

入場の際に、チラシの束といっしょに、キャスト・スタッフ一覧のような紙が配布されたので、プログラムは買わなかった。

3階席最前列、ほぼ正面の座席だったが、見づらいこともなく、間近で見たい役者がいなければ、充分に良席だ。


配役は、次のよう。

オリガ・クニッペル ほか:大竹しのぶ
マリヤ・チェーホワ ほか:松たか子
壮年チェーホフ ほか:段田安則
青年チェーホフ ほか:生瀬勝久
少年チェーホフ ほか:井上芳雄
晩年チェーホフ ほか:木場勝己


ロシアの劇作家として知られるチェーホフの伝記劇。女優ふたりがそれぞれチェーホフの妻と妹を演じ、男優4人が各年代のチェーホフを演じ継ぐ。6人の俳優は、その役で出ない場では別の登場人物を演じながら、チェーホフという劇作家の44年の生涯を舞台に立ち上げる。

チェーホフは少年時代からボードビルに憧れ、ボードビルとして戯曲を書いたのだ、というのがこの芝居のいわんとするところで、「ロマンス」という芝居そのものがボードビルになっているのだろう。それに相応しく、舞台下手でピアノが生演奏(後藤浩明)し、キャストのうたも入って、音楽劇仕立てで進行する。出演者はマイクを付けている。

チェーホフを演じる4人の男優は、見た目や持ち味もちがうが、受け渡しの演出の妙もあり、芝居の流れに乗って違和感なく見ていられる。(ただし、一幕は、エピソードの描き方が冗長と感じるシーンがあったり、リウマチ婆ァや十四等官未亡人を演じる大竹しのぶの演技がいささか過剰に思える部分も)

この芝居の本領は、二幕。チェーホフの妻となる女優のオリガ(大竹)とチェーホフの妹マリヤ(松)の間の感情の綾や、チェーホフを挟んでの対峙を、女優ふたりが巧みに演じて大いに見応えがある。松たか子が上手い。

ふたりに加えて、チェーホフ(木場)、その主治医で大学時代の恩師(段田)、トルストイ(生瀬)、スタニスラフスキー(井上)の6役によって演じられる、チェーホフ晩年のシーンが出色の面白さ。
ボードビルとして書いたものがスタニスラフスキーによって自分の意図とは全くちがった芝居として賞賛を得てしまっていることを、晩年のチェーホフは嘆く。それを受ける井上スタニスラフスキーが、どことなくボードビルっぽいのも一興で、たとえばマリヤに求愛する男も悪くないが、スタニスラフスキー役のほうに見どころ多く、少年チェーホフというよりもこちらが本役でもよさそうだ。


チェーホフというひとは結核持ちのお医者さんで下痢に悩んでいたのだね。樺太に行ったことがあるというのをはじめて知った。

劇場からの帰り道、兄チェーホフを支えた妹マリヤという関係にもっと焦点を当てても面白いのではないか、と思った。