「ブルーストッキングの女たち」を観劇

3月20日(火)に、紀伊國屋ホールで、地人会第104回公演「ブルーストッキングの女たち」(作:宮本研、演出:木村光一)を観劇。

休憩込みで、上演時間は、3時間15分。
公演プログラム、600円(なんでも、地人会友の会々員には、プログラムを一冊無料でくれるらしい)。

客席は、C列が最前列になっていたから、前2列を潰しての張り出し舞台だったようだ。


伊藤野枝が、青鞜社平塚らいてうを慕って九州から出て来るところからはじまり、関東大震災後に、その野枝が、大杉栄とともに殺されるまでをえがいた芝居。歴史上の人物として名前ぐらいは知っていても、それ以上には知識らしいものを持たなかった私には、伊藤野枝大杉栄を中心にした人間関係が分かりやすくドラマとして提示されていて、とても面白く見た。

場の転換を、登場人物の独白がつなぐ。これが芝居の理解の一助にもなった(ストレートプレイでの独白は、あまり好きではないのだが)。主要登場人物が順番にこの独白を担うあたりにも、群像劇らしさが見て取れる。

当時、その時代の先端を生きていたはずの伊藤野枝平塚らいてう、神近市子、尾竹紅吉といった「ブルーストッキングの女たち」や、あるいは松井須磨子もそうだが、この芝居の女性たちは、結局のところ、男との関係のなかでその生を燃焼させ、あるいは安息を得るに到る、というえがかれ方。男女の関係に収斂させているから、その意味では、旧い女として登場する堀保子の存在は、いまの目から見ると必ずしも旧いとは感じない。「ブルーストッキングの女たち」というタイトルではあるが、観劇後は、むしろ、大杉栄辻潤荒畑寒村など、男たちのほうが印象が残る。

二幕終盤の、甘粕と大杉・野枝の対峙に緊張感があった。(なお、橘宗一は、この芝居には出ない)


子役が演じるのは、辻一(まこと)と伊藤魔子。どちらも伊藤野枝の子で、実在の人物だが、対照的にえがかれる。

一は、父の辻潤とともに、物乞い同然の姿で野枝の前に現れる。舞台下手でミルクを飲む(じっさいに飲んでいた)。

魔子が落としてゴロゴロ転がっていたリンゴも、後のシーンで、甘粕がかじっていたから、本物のリンゴだったのかな。

(この日は速見里菜さんが演じていた)魔子は、大杉と野枝が憲兵隊に連行される前のシーンから登場し、その後、両親の死を新聞で知ったことの独白&(フランスから大杉栄が魔子へ送った)手紙を読んで、辻潤の尺八とともに幕を切る。なかなかいい役どころ。
魔子ちゃんは、父親を「パパ」と呼んでいたのだねぇ。


なお、今公演の配役は、以下のよう。

伊藤野枝純名りさ
平塚らいてうかとうかず子
松井須磨子/ノラ(劇中劇「人形の家」):旺なつき
神近市子:加藤忍
尾竹紅吉:佐古真弓
ミツ(辻潤の母):上野淑子
堀保子(大杉栄の妻):北條文栄
日蔭茶屋の女中/リンデ夫人(劇中劇「人形の家」):奥山美代子
メゾン鴻の巣の女給/女中(劇中劇「人形の家」):福沢亜希子

大杉栄:上杉祥三
島村抱月:仲恭司
辻潤中村彰男
荒畑寒村:若松泰弘
甘粕憲兵大尉/ヘルメル(劇中劇「人形の家」):田中正彦
尾行警官:平尾仁
奥村博:林宏和
憲兵曹長:神野崇
当番兵/メゾン鴻の巣のバーテン:井上拓也

一(まこと):平田敬士・為谷龍児 (交互出演)
魔子:矢板佳純・速見里菜 (交互出演)


参考(地人会ニュース)
http://www1.biz.biglobe.ne.jp/~CJK/news.htm


そういえば、(私は見ていないが) 以前に、たしか「ブルーストッキング・レディース」というミュージカルがあったはず。

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関連の過去ログ
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20070315/p1
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20070306/p1