「悲劇喜劇」2006年7月号 (北村昌子インタビュー/現代に挑む伝統演劇)
6月7日発売の、
「悲劇喜劇」2006年7月号(早川書房、定価1300円)
を買って読んだので、少しく内容と、雑感など。
インタビューは、北村昌子 聞き手:横溝幸子
劇団四季のミュージカル「夢から醒めた夢」で老婦人を演じる。
56年に及ぶ女優歴。
調布学園在学中の学生演劇で、慶応高校生だった浅利慶太や日下武史と共演。
いずみたくの影響で舞台芸術学院に学ぶ。薄田研二の劇団中芸(中央芸術劇場)に入るが、中芸が村山知義の新協劇団と合併、東京芸術座となる。左翼化について行けなくなった頃、浅利慶太に誘われ劇団四季へ。主要キャストとして活躍。その後、福田恆存の劇団欅を経て劇団昴に所属。
いまも昴の劇団員だが、1994年の「クレイジー・フォー・ユー」でボビーの母を演じてからは再び四季の舞台にも立っている。また、木村光一演出の地人会の舞台にも出演。
『昴は三百人劇場が中心でしょ。最初は声が大きすぎる、語尾まではっきり言いすぎると注意された。』『福田さんは導いて下さる方。演劇の王道を正しく歩めるだろうという信頼感を教わりました。』
『浅利さんは動きを少なく、台詞を重視して表情で芝居するなとおっしゃる。木村(光一)さんはもっと動けと、表情を動かしてうねった芝居を要求なさる。』
四季では『母音発声とブレスね。昨年『間奏曲』に出た時も音が違うと厳しくチェックされたし、三時間前に楽屋入りして毎日母音発声です。』
12月には、三百人劇場の最終公演「八月の鯨」の再演に出演する。三百人劇場は、20億円あれば救われたという。
インタビューは4頁。他にも、興味深い内容が詰まっていて、読み応えがある。
特集は、「現代に挑む伝統演劇」
★「歌舞伎の国境線」(渡辺保)は、蜷川幸雄、野田秀樹、串田和美、三谷幸喜という4人の演出家、作家の手になる歌舞伎から、最近の歌舞伎の新作、新演出を評したもの。蜷川幸雄の「十二夜」は歌舞伎についての批評であり、野田秀樹の「研辰の討たれ」は歌舞伎へのオマージュ、なのだそうな。
★「能・狂言界の革新者たち」(石澤秀二)は、観世寿夫、栄夫、静夫の三兄弟と、野村万之丞(萬)、万作兄弟の足跡を中心に、能役者と現代演劇、歌舞伎との交流をたどったもの。
★「私の現代劇と歌舞伎との出会い」(山本健一)は、サブタイトルが「串田和美氏に聞く」 コクーン歌舞伎「北番」千秋楽の日に行なったインタビュー。
★「PARCO歌舞伎」(安達英一)は、三谷幸喜脚本・演出「決闘!高田馬場」について。高田馬場の韋駄天走りをやろうということからはじまった、「初めにラストシーンありき」の作品だった。
★「初演はいつも歌舞伎役者」(水落潔)は、「総じて現代演劇よりも伝統演劇の人のほうが時代の動きについて敏感だった」というのを、活歴以降の例を引きながら。
・・・それにしても、近頃は、「オマージュ」という言葉が流行りなのかしら?どうして「オマージュ」なんていうのかな。賞讃とか賛辞といってはダメなのか。
三百人劇場は、建て直すと20億もかかるのか、と。
ところで、「悲劇喜劇」とか「テアトロ」といえば、部費で購入したのを、他には誰れも読まないからとほとんど占有し、講堂の裏に棚を作って、そこに並べておいて、校舎の階段で声出しなんかしているのをよそに、暇つぶしに悪企みよろしく読む、というのがあるべき姿と思ったりする。