東海道四谷怪談 (南番)



シアターコクーンで、渋谷・コクーン歌舞伎東海道四谷怪談」の南番を観劇。



4月9日(日)の夜の部で、午後5時開演で、8時5分の終演。途中休憩15分。

プログラムが、1500円。



子役が出ているのは、北番のほうだと聞いていたのだけれど、チケットWeb松竹に戻って出て来るチケットは南番ばっかり。これ以上待っていても仕方ないので(プログラムを買わないと、鶴松ちゃん以外の子役は誰れだか分からんのだもの)、南番に行くことにした次第。

ちなみに、最近は、歌舞伎のチケットは、間近に戻って来るのをねらって取ることがほとんど。出自のよいものが多いらしく、いちど嫁き損なっているだけに気だても良好なお座席である(歌舞伎座だとままある、3階1列21番などは、とっても美形だわいなァ(笑))。





いちおう、北番に出演の子役を書いておくと、以下のよう。



 遠見のお岩、小仏小平倅次郎吉: 中村鶴松

 遠見のお袖、夢のお岩: 鶴旨美祐

 夢の伊右衛門: 岡井真樹







(ところで、「南番」「北番」といういい方、どういう意味があるのかしら?鶴屋南北だから「南」と「北」というだけなの、かな)



それはともかく、南番の舞台。

非常に面白く、演劇を見ることの醍醐味に満ちている。ほとんど予備知識なく見たので、かなり驚かされた。劇場の規模が(歌舞伎公演としては)小振りなためか、あるいは演出のせいなのか、全体に濃密に感じられ、立ち回りは絢爛でスピード感にあふれる。



まずは、歌舞伎のガイドブックの類に、「東海道四谷怪談」の見どころとして載っている、「髪梳き」や「提灯抜け」をはじめとした、歌舞伎の趣向が堪能出来る面白さ。勘三郎の早替わりも、目を楽しませてくれる。花道のかわりに1階客席の通路を使用しているが、ちゃんと「すっぽん」まで用意されていたのには、びっくり。



橋之助伊右衛門がじつに魅力的。産後の肥立ちのよくないお岩をいびるところが、たまらなく、いい(ああいうのを見ると、わくわくしちゃう。傘貼りの貧乏暮らしで、あんな女房が寝ていたら鬱陶しくて、気分もくさるわな。キリキリいたぶって追い出し、金持ちの孫娘に見初められたを幸いに、そちらへなびくは男の道理というものだぞ)。ワルな色男は、よいなぁ、と思わせる。

終盤(大詰)の、伊右衛門と黒四天(捕手)や勘三郎との立ち回りの、速さと迫力にも瞠目!中村橋之助丈で柳生十兵衛はピンと来なかったが、存外、面白いかも知れないと思わせた。



普通に大歌舞伎で上演される場合と、どの程度ちがっているのかは、私には分からない。が、歌舞伎らしい仕掛けや、だんまり、「今日はこれぎり」での幕の引き方などなど、むしろ歌舞伎ならではの手法を強調して見せているような印象も。



本水を使った演出は、サービス満点。前方客席にかかる水は、「近松心中物語」よりもずっと多いだろう。だって、わざとあんなに水を飛ばしているのだもの。水鉄砲でかける出演者までいるし。お客よりも、やっている出演者が楽しそうだ。



お岩さんは子年の生まれ、なのだと。だから、でっかいのとか、小っさいのとか、この舞台には、ねずみがいっぱい出て来るのだって。笹野高史さんが芝居途中のカーテン前でのお話で、そういっていた。



カーテンコールが2回あって、2回目の客席は、ほとんど立ち上がっての拍手。

勘三郎橋之助」と、繰り返し絶叫しているひとまでいた。たしかに、ものすごく面白くて、13000円のチケット代は高くないと思った(が、あんまり何度も絶叫されて、現実に引き戻された)。



座席での飲食が可、になっていたのは便利でいい。

が、15分の休憩中に弁当を食うのは、忙しそうだ。



宅悦内の場での、中村勘三郎丈の(与茂七の)セリフ、「雨でも降らねばよいが」「振られ男(直助権兵衛)がいるからな」ってのが、洒落ていて気に入った。いちど、いってみたいものだ。