「チョコレートコスモス」を読んだ
恩田陸「チョコレートコスモス」(毎日新聞社、1600円税別)
が面白い!
演劇小説である。
まだ、ゼロ公演・『目的地』 が終わったところまでしか読んでいないのだが、ここまで、すばらしい展開。先を読むのが楽しみ。フィクションではあるが、この演出家はあの人物をイメージしているのだろうな、この劇場はあそこを想定しているか、この女優はあのひとに近いかな、といった見方も出来なくない。
[追記(3/28) 「チョコレートコスモス」を読了したので、追記。
半分も読まないで、面白い!と書いちゃったが…、いや、面白いのだけれど、後半は、肝心のオーディションがためにするような設定で、上手く書いてあるなぁと思いつつも、嫌な感じだ。
たとえどんな有名演出家が演出しようが、世界的な映画監督が手がける舞台だろうが、誰れしもが出たがる訳ではないのだし、じっさいにこの小説のようなオーディションをしたら、反発も大きく、背を向ける女優(や事務所)だっているのではないか。脚本すら何も出来上がっていないのに、名前もキャリアもあるプロの女優、芸能人を対象に、オーディションでここまでするのは無理がある(個別劇団の内部でならあり得ても)。
佐々木飛鳥の資質と空手との関係性が曖昧なままだし、結果として、主人公であるはずの佐々木飛鳥よりも、東響子に筆を費やし過ぎている。ひとつ引っかかってしまうと、東響子という名前まで、どこかの新劇団のベテランみたいで、若手女優らしくなく思える。]
ところで、(古典芸能や芸事ではない)演劇の世界をえがいた小説(フィクション)というのは、意外と少ない気がする。
過去に読んだ演劇ものの小説で面白かったのは・・・ともに芝居をするメンバー探しの過程に謎解きを絡ませた、光原百合「最後の願い」(光文社)。商業演劇の世界を舞台にした、神津カンナ「美人女優」「カーテンコール」(ともに集英社)。オーディションを中心にえがいた、佐々木譲「ステージドアに踏み出せば」(集英社文庫)。
こんなところである。
神津カンナ氏の二著には、けっこう影響を受けた。
※[追記]部分を加筆して、タイトルを、「チョコレートコスモス」が面白い、から、「チョコレートコスモス」を読んだ、に改めました。