坂田藤十郎襲名披露 壽初春大歌舞伎 昼の部



1月18日(水)は、歌舞伎座で、坂田藤十郎襲名披露 壽初春大歌舞伎の昼の部を観劇。



今月の昼の部は、「鶴寿千歳」「夕霧名残の正月」「奥州安達原 環宮明御殿の場」「万才」「曽根崎心中

11時開演で、4時15分頃の終演。



(「鶴寿千歳」と「夕霧名残の正月」には間に合わず)「奥州安達原」からの観劇。

座席は、3階の1列目。袖萩祭文の袖萩とお君の出が花道からなので、それが見えなかったが、他は別段問題はなし。



「奥州安達原 環宮明御殿の場」

は、山口千春嬢のお君が、今回の目玉キャスト。



山口千春といえば、児童劇団の子役としては、いま、歌舞伎でもっとも使われているひとり。ここ2年で、竹の間が出た「先代萩」で鶴千代を2回、「文七元結」のお豆、「良寛と子守」の里の子に出演、歌舞伎以外では博多座の「売らいでか!」など。



期待にたがわず、上手い。歌舞伎の子役にしては表情があって、動きやセリフの意味が分かりやすい。とくに、目に感情があるのが、いい。おそらく、彼女が、自分の役柄、置かれた状況、セリフを理解して演じているからだろう。年少のお行儀のよい子役が段取りとセリフをまる憶えして演じるのとはちがうレベルの演技になっている。それでいて演じ過ぎにならず、また、挙措も見映えがいい。山口千春ちゃんは6年生で、その年齢が、役に血を通わせているともいえよう。

袖萩に扮する福助丈の芸風にも合っていると思った。



セリフの上手さも健在で、なかでも、袖萩が癪を起こしたとき、枝折門の外から助けを求めて呼びかけるセリフの呼吸は秀逸。



今月は、夜の部の「伽羅先代萩」が見ものだが、子役の鑑賞ということでは、この「袖萩祭文」のお君に見るべきところが多い。



その年齢々々で、ぴったりの役柄に恵まれ、次々と役を掴んで大きな仕事をこなして行く子役がいる反面、ほんの1、2年のズレで、オーディションのチャンスすら逃すこともある。子役には、運がつきまとう。子どもとしての完成期に適役に出会えるかどうかに、子役としての成熟を見せられるかどうかの分かれ目がある。子役とは、そういう運命だ。



かかさま、いのー。/あー〜。



曽根崎心中

は、平野屋徳兵衛(翫雀)が油屋九平次(橋之助)の企みにはまり、金を騙し取られ、衆目の前で打擲される生玉神社境内の場に迫力がある。徳兵衛の額に傷をつけるところ、あれ、上手いことやるなぁ!



曽根崎の森では、短刀を構えたところで緞帳が下りたけれど、どうしてブスっとやらないのだろう。あれでは、死んだか死に損なったか分からないじゃないか。恋の手本になった、といわれてもなぁ…。() 派手にやらなきゃ、じれったいままで、どうもすっきりしない。徳兵衛が25で、お初が19で、ともに厄年だといっているが、藤十郎丈の十九はちょっと無理むり。



子役の丁稚長蔵(金子尚太郎)が担いでいたのは、あれ、何。平野屋はしょう油屋だから、それかしら?





※[追記] この芝居は、じっさいにあった心中事件をもとにしているから、ああいう幕切れでも、見ているひとはちゃんと分かる訳か。相対死にが、恋の手本な訳だ。