吉例顔見世大歌舞伎 昼の部
歌舞伎座で、吉例顔見世大歌舞伎の昼の部を観劇。
雨の予報だったのに、傘を忘れて家を出てしまい、降り出しちまったら幕間に銀ぶらとしゃれ込むって訳にも行かないからと、東銀座に着くとその足で新橋演舞場へまず寄って、「児雷也」の筋書きを先に買って、それから歌舞伎座へ。
さて、お豆どんは誰れかしらと、歌舞伎座の筋書きのページを繰るのももどかしく、披いて見れば、
山口千春ちゃんだよ!
いい子役を出してくれたね、やんや、やんや。うれしいよー。
こいつぁ、「文七元結」がはじまるまでが、待ち遠しいわいなァ。
昼の部は、11時開演で、「息子」「熊谷陣屋」「雨の五郎」「うかれ坊主」「文七元結」
「息子」は、解釈を楽しみたい。
息子(染五郎)も火の番の老爺(歌六)もじつの親子なのにお互いそれと気づかない。途中で気づくのだが、親である老爺のほうが気づくのが遅過ぎやしないか。いや、気づかないままなのか、気づかないふりをしているのか、信じたくなくて心に戸をたてたのか、そのあたりは結局よく分からない。見る側の解釈で芝居を完結させる試みが、楽しみにつながりそうな芝居だ。
「熊谷陣屋」
同じ陣屋でも、「盛綱」は面白いのに、「熊谷」はどうしてこんなに退屈なのだろうとつくづく思う。(誰れが演じても、この演目を好きになる日は来そうにない)
余談ですが、堤軍次で出演している愛之助丈。筋書きの『今月の出演俳優』の写真が、こわい顔のになっているのですが…。
舞踊二題はパスした(ちなみに、隣の席のお客さんは、息子と文七元結のとき、いなかった)。
で、「文七元結」
お豆どんが、肩たたきしながらお菓子を欲しがるのが、ほのぼのかわいい。
山口千春ちゃんは、役(化粧やかつら)によって顔がちがって見える。鶴千代君と里の子とお豆では、パッと見て、同じ子が演っていると分からないよ。たとえば、石山真帆さんや小川夏樹ちゃんや関根香純ちゃんなど、おなじみの子役の大方は、演目や役がちがっても誰れが誰れとすぐ分かるのに、山口千春ちゃんはむずかしい。
身体は小さいのに、大きくてしっかりした声、というギャップも印象的。
角海老女房お駒(秀太郎)がお久を形に長兵衛(幸四郎)に五十両を貸すとき、「来年の大晦日まで」はお久を店には出さないからそれまでに五十両を返すように、といっていた。もともとは、「来年の三月まで」は店に出さない、だったはずで、筋書きでもそうなっている。
いくら長兵衛が腕のいい左官でも、三月やそこらで五十両を返済するなんて出来るのかな?と思っていたから、「来年の大晦日まで」とした今回のセリフには、うなずける。
お久は、今年1月に、研佑改め右近さんの役を見ているから、いまさら宗之助丈ではいささか無理に感じてしまう。かわいく見えないので、健気さもいまひとつ。
酒屋丁稚三吉は、金子尚太郎くん。「文七元結」、面白いことはいうまでもなく、子役が出るし、ハッピーエンドで、お後もよろしい。
11月6日(日)、昼の部の終演は、3時45分。歌舞伎座の外は、雨の銀座であった。
今月は、舞台写真が出る頃に、もう1回、昼の部を見よう!