孤宿の人
宮部みゆき「孤宿の人」上・下(新人物往来社、各巻1800円税別) を読了。
この著者の時代物としては、ハードな展開。とにかく、人死に が多い。
囚われの鬼、うさぎが跳び、雷鳴がとどろく。そして、「呆」が「方」になり「宝」になるが、結末は苦い。
宮部みゆきというひとは、時代物の書き手としては本流にある作家ではないけれど、それゆえに、本流の書き手とはひと味ちがう、いわば搦め手から、そこに生きる人びとの機微を描き、封建社会のシステムや不条理、そこから生じる不可思議、(目に見えない)権力の構図をあぶりだして、真相を穿つ。
小説の内容とは直接関係ないが、幕末に、かの鳥居耀蔵が讃岐丸亀藩に預けられ流人生活を送った史実をヒントに書かれた、とのこと。
…ひとは、自分の見たいものを見、信じたいものを信じてしまうのだ。
[追記] 宮部みゆき氏は、7月1日から、産経新聞に「楽園」を連載する。