滑らかな虹


十市社(とおちのやしろ)「滑らかな虹」上・下(東京創元社、上:1600円税別 下:1800円税別)

http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488017972

先月の読売新聞、エンタメ小説月評で取り上げられていたので、

http://www.yomiuri.co.jp/life/book/news/20171017-OYT8T50018.html

読んでみたら、おもしろかった。

とりあえず、「上」だけ買って読みはじめたのだが、おもしろいので、すぐにネット書店で「下」を注文したのだった。

小学校の担任教師が、5年生のクラスにゲームを提案し、長期にわたって全員参加させるなんて、そもそものその設定が受け入れられないとダメかも知れないが、小説は、いまは中学生になっている当事者の女の子が書く手紙と、担任教師の婚約者で同僚だった女性の回想とで綴られる形式で、ふたつの視点で過去の出来事がひもとかれる展開がおもしろさの要。

虐待や貧困など、今日的な問題の織り込み方にはひねりがある。

ただ、結末や後日談は、すっきりしない。
おかしなゲームを押し付けながら、深謀遠慮に欠け、ゲームの管理や児童の掌握に失敗した担任教師に因果応報的な罰が下ったのだと考えてみても、読者としては溜飲が下がらない。

並んだランドセルの色から「滑らかな虹」というタイトルも、ちょっとピンと来ないかな。