新橋演舞場 十月花形歌舞伎「GOEMON 石川五右衛門」


十月花形歌舞伎「GOEMON 石川五右衛門」(水口一夫 作・演出)
  片岡愛之助宙乗りにて葛籠抜け相勤め申し候

10月3日(月)〜27日(木)、新橋演舞場 ※昼・夜同演目

4日(火)の昼の部を観劇。

11時開演。

上演時間は、「第一部 1時間45分+幕間35分+第二部 1時間20分」

筋書は、1500円。


和洋折衷の新作歌舞伎を上演しているシスティーナ歌舞伎から生まれた愛之助石川五右衛門が、東京に初登場。歌舞伎とフラメンコ、そして女性キャストも舞台を彩る。

主な配役は、

石川五右衛門: 片岡愛之助
カルデロン(神父)/霧隠才蔵: 今井翼
出雲の阿国: 中村壱太郎
加藤虎之助: 中村種之助
石田三成: 上村吉太朗
口上/女猿楽: 片岡千壽
友市: 片岡千太郎
北政所の侍女: 中村未輝
北政所: 中村扇乃丞
小早川隆景: 中村寿治郎
石田局/名古屋山三: 上村吉弥
豊臣秀吉: 中村鴈治郎
フラメンコ: 佐藤浩


第一部の宙乗りは、五右衛門ものではおなじみの葛籠抜け。五右衛門を取り逃がした加藤虎之助が、(先代萩の)荒獅子男之助の態という趣向。第二部では、(霧隠才蔵が忍術で変身した)鷹に乗って、五右衛門が異国(イスパニア)を目指して飛び立つ幕切れで、合わせて2回の宙乗りがある。

第二部では、名古屋山三と不破ならぬ五右衛門が、1階客席通路を両花道の代わりにしての「鞘当」(留め女が、出雲の阿国)。

五右衛門では欠かせない、絶景かな絶景かなの場面では、装飾のないフレーム剥き出しの楼門が、斬新。

クライマックスの立ち回りでは、客席通路を多用、本舞台と客席とで同時進行のなか、五右衛門は縦横無尽、2階客席にも出没する。


この舞台の石川五右衛門は、赤毛(ハーフ)。南蛮寺の神父・カルデロンを父に、明智光秀の家臣の娘・石田局を母として生まれ、幼名は、友市。

通訳に転じていた父・カルデロンは、キリシタン禁止令が出て国外追放と決まり、イスパニアへの帰国を余儀なくされ、母・石田局は主君・光秀の敵である豊臣秀吉に召し出された後に、無念の死を遂げるに到るのだが、その前にある、友市少年と石田局、友市とカルデロンとの、それぞれ親子の別れが見せ場。母との別れに続いて、父との別れもありと、「子別れ」のダブルパンチ!

なお、子役の友市少年は、第二部では、イスパニアの酒場で飲んだくれる父・カルデロンの前に「幻の友市」として現れて(すっぽんからの登場、退場)、フラメンコを踊る。第一部では、歌舞伎らしく子別れを演じ、第二部ではフラメンコと、和洋にしどころのある役である。

フラメンコといえば、もちろん五右衛門のフラメンコもあり、阿国もともにフラメンコを踊る。

上手で大薩摩に三味線、下手ではフラメンコの歌にギターという、和洋の音楽が掛け合う競演もあり。

宙乗りで引っ込んだあと、本舞台に片岡愛之助と、(後から)今井翼が出て、ふたりでのカーテンコールがあった。


石田三成は、第一部で、秀吉の臣として加藤虎之助と対になる役どころ。

北政所の侍女は、第一部で北政所にしたがって登場し、北政所にしたがって退場する。セリフはなし。

五右衛門と、その味方となる名古屋山三は、ともに明智光秀にゆかりの者という設定。霧隠才蔵は、真田の家来で豊臣方だったが、ともに百地三太夫のもとで忍術修業をした仲の五右衛門に手を貸す。

上村吉弥今井翼(歌舞伎の舞台では、「出雲屋」という屋号になっているみたい)の両優が、ウエイトのある二役を務める。とくに、前者は、石田局と名古屋山三で、主役にも劣らぬかと思うくらいの活躍。

第一部は、発端〜子役・友市のシーンと続き、主役(の五右衛門)が舞台に登場するまでが意外と長い。