アルカディア(シアターコクーン)


シス・カンパニー公演

アルカディア

作:トム・ストッパード、翻訳:小田島恒志、演出:栗山民也

4月7日(木)に、シアターコクーンで、昼の部を観劇。

午後1時開演。

会場に掲示されていた上演時間は、

『1幕 1時間24分、休憩 15分、2幕 1時間16分』

と、なんだか変に細かい時間表示。

観劇したステージの終演は、ちょうど、午後4時ぐらいだった。

公演プログラムは、1000円。

1階の客席は、1列撤去されて、XB列が最前列になっていた。


[出演]

堤真一 : バーナード・ナイチンゲール(現代、バイロン研究家。バイロンとチェイターの関係に関心を抱く)
寺島しのぶ : ハンナ・ジャーヴィス(現代、作家、シドリー・パークの隠遁者の研究をしている)
井上芳雄 : セプティマス・ホッジ(19世紀、トマシナの家庭教師)
趣里 : トマシナ・カヴァリー(19世紀、屋敷の令嬢)
浦井健治 : ヴァレンタイン・カヴァリー(現代、屋敷の長男)
安西慎太郎 : ガス・カヴァリー(現代、屋敷の次男)/オーガスタス・カヴァリー(19世紀、トマシナの弟)
初音映莉子 : クロエ・カヴァリー(現代、屋敷の娘でヴァレンタインの妹)
山中崇 : エズラ・チェイター(19世紀、詩人)
迫田孝也 : ブライス大佐(19世紀、レディ・クルームの弟)
塚本幸男 : リチャード・ノークス(19世紀、庭園設計士)
春海四方 : ジェラビー(19世紀、屋敷の執事)
神野三鈴 : レディ・クルーム(19世紀、トマシナとオーガスタスの母)

詩人のバイロンと、チェイターの妻は舞台には登場しない。


詩人のバイロンやその周辺を研究している作家と研究者のやりとりを中心とした場(現代)と、彼らの関心事である過去の出来事(1809〜1812年のその屋敷で起きたこと)を演じる場が、同じ英国貴族のお屋敷のセットで、交互に演じられて行き、後半は、現代と過去とが重ねられるようにも展開する。バイロンの伝記の隙間に想像力と知性を投入して創り出した戯曲、ということか。

芝居の構造はおもしろいし、登場人物の会話は観客を知的にくすぐる。半面、いちど見ただけでは、とても理解が及ばない。

もちろん、理解することが芝居の楽しみとは限らないし、これは思春期の少女にとっての肉欲的な抱擁についての話なのかも知れない・・・。

私などはまるっきりの文化系育ちなので、数学の定理や、法則?、科学理論?についての知識がないから、それも分かり難さの一因だったろう。

出演者のうちひとりだけ、過去と現代の両方にキャスティングされているが、二役を演じることは、戯曲に指定されているとのこと。

19世紀のシーンにも現代のシーンにも登場するといえば、カメ。時が経ってもそのままあるあの屋敷の象徴的意味合いと見るべきか。(亀は万年、というから、もしかして、同じカメが生き続けている、ということだったりして) 休憩中にも、幕前で、あのカメは、ときどき、ほふく前進していた(が、本物ではない)。

19世紀と現代とでは、圧倒的に、19世紀の場がおもしろい。それは、トマシナが、なにより魅力的だから。トマシナを演じる水谷豊の娘さんの腕の細さが驚異的。あの細さの腕は、プロのバレエダンサーでも、そんなにはいない細さだ。実年齢を感じさせず、いかにも少女らしい「聖」と「艶」を舞台に現出させていた。

井上芳雄の家庭教師が、取り出したナイフをリンゴに突き立てるや、スッパリ切って口に運ぶあたりは、いかにもシニカルな伊達者っぽくて堂に入っていた。