お江戸ありんす草紙 瓜ふたつ


6月の、小学館文庫の新刊の一冊、

七瀬晶「お江戸ありんす草紙 瓜ふたつ」(630円+税)

http://www.shogakukan.co.jp/books/09406162


ライトノベルな時代小説だが、けっこうおもしろく読める。

主人公のおいちは、吉原の禿(といっても、振袖新造になる寸前)なのだが、とある大名家のお姫様・千代姫と瓜ふたつ。吉原を足抜けしたおいちと、縁談がお気に召さない千代姫とが、市中で入れ替わる、というお話。

そっくりさんや双子のきょうだいの入れ替わりものといえば、すぐにでも有名な先行作品が思い浮かぶし、またかとも思ってしまうけれど、実在の人物をほどよく絡ませた筋の運びと、ライトノベルらしい読みやすさが、いい。

ふたりのヒロインを取り巻く登場人物の配置には、むかし懐かしのシリーズ時代劇の趣きも感じられる。おいちと千代姫に、自分好みの脳内キャスティングをほどこせば、楽しみの一助になるかも。


この小説は、刊行前に、半分に当たる前半部分を収録した文庫サイズの見本誌が、一部書店で無料配布されていて、たまたま、その無料見本誌を手にしたことも、購入のきっかけになった。そんな前宣伝にふさわしく、この「お江戸ありんす草紙」は、刊行前からすでにシリーズ化が決まっていたようで、続編(第二弾)は、今秋発売予定とのことである。