ウィンズロウ・ボーイ (新国立劇場小劇場)


「ウィンズロウ・ボーイ」

作:テレンス・ラティガン
翻訳:小川絵梨子
演出:鈴木裕美
振付:藤浦功一

新国立劇場小劇場で、4月22日(水)のステージを見た。午後1時開演。第一幕90分、休憩15分、第二幕90分。

公演プログラム、800円。

配付はされなかったが、配役表(キャストの顔写真付きの印刷物)も用意されていて、自由に取ることが出来た。

子役の出演予定については、→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20150326/p3

客席は、B1列が最前列。


配役は、下記。

アーサー・ウィンズロウ 小林隆
グレイス・ウィンズロウ 竹下景子
キャサリン・ウィンズロウ 森川由樹
ディッキー・ウィンズロウ 山本悠生
ロニー・ウィンズロウ 渋谷龍生(近藤礼貴とのWキャスト)
ヴァイオレット 渡辺樹里

ジョン・ウェザーストーン 川口高志
デズモンド・カリー チョウヨンホ

ミス・バーンズ デシルバ安奈
フレッド 原一登

サー・ロバート・モートン 中村まこと


出演者は、カーテンコールのときも、上記の4グループに分かれて、舞台上に並ぶ。

登場人物は、ウィンズロウ家の親子5人とメイド、ウィンズロウ家と近しい男性2名(ジョンはキャサリンの婚約者、デズモンドはキャサリンに想いを寄せる事務弁護士)、ウィンズロウ家の起こした裁判を取材に来る女性記者とカメラマン、ロニーのためにアーサーが頼む弁護士、である。


優秀で両親のおおぼえもめでたかったウィンズロウ家の二男・ロニーは、為替を盗んで換金したとの疑いで、海軍士官学校を放校処分となり、帰宅する。自分はやっていないというロニーを信じた父・アーサー・ウィンズロウは、ロニーの名誉回復のために法廷闘争に持ち込むべく、辣腕の法廷弁護士・ロバート・モートンに依頼する。ウィンズロウ家を訪れたロバートは、法廷さながらにロニーを厳しく尋問するが、無実の確信を得て、その弁護を引き受ける。

軍や国を向こうに回した名誉回復の戦いは、世の関心をも集めながら2年にも及び、その間に、ウィンズロウ家は、疲弊して行く。元銀行員の父・アーサーの財産はどんどんと減じて、体調は悪化の一途をたどる。女性参政権運動に身を投じている長女・キャサリンは、婚約を解消され、精神的にも追いつめられる。長男・ディッキーは大学を続けることが出来なくなり、働きに出る。メイドを雇ってもいられないのだが、アーサーも妻のグレイスも、ヴァイオレットには解雇をいい出せないままでいる。この戦いを続けるべきか否かの激しい葛藤に苛まれるなか、ついに法廷は、結審する。

舞台上にあるのは、ウィンズロウ家のリビング。(舞台の奥には庭がある。リビングの上手ドアの向こうはキッチンがある模様。玄関は下手ドアの向こう側、リビングから各部屋へも下手ドアを通って行くつくりのようであった) このリビングで、全ての場が展開する。

つまり、法廷劇ではなく、裁判を戦わざるを得なくなった家族のドラマとしてつくられているところに、この芝居の見ごたえがある。第一次大戦直前のイギリスが舞台になってはいるが、裁判の遂行にともなう家族の犠牲という部分においては、今日の日本の観客にとっても我がことのように共感するものがあるはずだ。
個人の権利がないがしろにされたら、そして、冤罪の汚名を着せられたとしたら、果たして自分ならどこまで戦えるか?・・・・長年働いて貯めた財産を投げ打っても裁判を続けるのか。弟の裁判のために、大学を退められるか。家族の名誉を守るために、結婚をあきらめられるか。新聞沙汰になり、世間から好奇の目を向けられても、耐えられるのか。
もしかしたら、明日、こんなことが我が身に降りかかって来ないとは決していい切れない。そう思えば、心もざわつく。

ひとつ違和感をおぼえたのは、当事者であるロニー少年が、退学になって帰宅した当初こそ萎れていたものの、その後は別の学校で楽しくやっているらしく、家族の犠牲をどこまで知ってか知らずか、他人事のようにケロッとしていたことだ。ロニーまでが苦悩しては芝居が重くなるのかも知れないが、いささか、腑に落ちない態度ではある。(ついでに書けば、ロニーには、もう少し、滑舌よくセリフをしゃべって欲しかった)


今回の「ウィンズロウ・ボーイ」は、新国立劇場演劇研修所の修了生を起用することを前提にしての企画だったらしい。そのため、アーサー、グレイス、ロバートの3役と子役以外は、研修所の修了生が出演していた。

なかでも、ロニーの姉であるウィンズロウ家の長女・キャサリンは、じつにいい役で、それを好演して、いちばんの見どころにしていた。
その、森川由樹という女優さんは、少し前に、読売新聞の記事で紹介されていた。
http://www.yomiuri.co.jp/culture/news/20150406-OYT8T50238.html