ハムレット (彩の国さいたま芸術劇場 大ホール)


蜷川幸雄80周年記念作品 彩の国シェイクスピア・シリーズ番外編 ニナガワ×シェイクスピア レジェンド第2弾

ハムレット

作:W.シェイクスピア、翻訳:河合祥一郎、演出:蜷川幸雄、演出補:井上尊晶

彩の国さいたま芸術劇場 大ホールで、2月4日(水)のステージを見た。

午後2時開演。

ロビーに掲出されていた上演時間は、第一幕 1時間40分、休憩 15分、第二幕 1時間35分。終演予定は、5時30分だったが、2分ぐらい早く終わった。


公演プログラム、1600円。舞台写真4枚セットというのも売っていて、A・Bの2種類があり、どちらも、800円。

プログラムは買うつもりだったが、入場の際に、折り込みチラシ類といっしょに配役表が配付されたことと、列に並ぶのが億劫になったので、買うのはやめて、さっさと着席した(とにかく、列に並ぶのは好きじゃない)。


1階客席は、A列はなく、B列が最前列になっていたので、座席は、実質的な11列目だった。

開演前に映し出されていた字幕(英語訳も付いていた)によれば、今回の「ハムレット」は、その戯曲が日本に紹介された19世紀末の貧しい庶民の日本家屋で、「ハムレット」の稽古を行なう、という前提で上演するもののようである。廃墟になっているような、2階建ての和風長屋のセットをバックにして、演じられる。最初に、キャストが登場して、舞台ばなに1列に並んで、一礼あってから、開演する。

シェイクスピアを日本人の役者たちが演じますよ、という前提をあえて示しておいて、先王の亡霊が能の後シテふうだったり、役者による劇中劇では、歌舞伎っぽい演技やツケ打ちがあり、また、役者たちがひな人形になったりと、日本の伝統芸能の様式を摘んでいるのも、すでに決まっている海外公演のことまで見越しての演出なのかな。


2003年の、あの藤原竜也ハムレットが再び見られるという期待があったが、どうにも、今回のハムレットは、重苦しい。自らに苦行を課しているような発声、といえばいいのか、セリフは頻繁に不明瞭になるし、とくに序盤は、顔に浮かぶ汗の量も多くて、なんだか見ているほうがしんどくなった。

おもしろかったのは、ハムレットを、親の世代であるクローディアスと、少し下の異世代的なフォーティンブラスとに挟まれた人物として、改めて世代を意識させる舞台になっていたことだ。

クローディアスは、井戸端で祈るシーンでは、その肉体を観客にさらし、水までかぶる。平幹二朗という劇界を生き抜いて来た名優が老いた裸身を見せる。
そして、若いフォーティンブラスを演じるのは、すでに舞台で裸体を見せることが定番になっている内田健司で、今回は上半身だけだが、演出の蜷川幸雄をして今日的な若者のひとつの象徴的な身体と認識されているようだ。その細い身体は、研ぎ澄まされたようだが、脆弱にも見えるし、禁欲的にも見えれば、そもそも欲望とは無縁のようでもある(どこかに演出家が書いていた、放っておくと、一日に、ポテトチップス3枚しか食べないなどという話が本当かどうかは知らない)。

圧倒的な存在感を持つクローディアスは、すでに老いている。席位置によっては聴こえないかも知れないぐらいの声しか発しない若きフォーティンブラスは、兵を率いていながら、その戦果にすら拘泥しないかのようだ。
そんな両者の狭間で、激情を見せ、苦悶を見せ、そして毒禍に散るのが、今回のこの舞台のハムレットである。


衣裳は、クローディアスやガートルード、その廷臣たちは、赤や赤茶系。ハムレットは、黒。オフィーリアは、白。ホレイシオは、グレー。レアーティーズは、グレー+白。フォーティンブラスは、青+白。
ハムレットも一部シーンでは、赤いマフラーをしていたりと、色遣いに意味を持たせた衣裳のようだ。

満島真之介のレアーティーズは、思った以上に男臭い。クライマックスのハムレットとの剣戟シーンは、見ごたえがある。

ハムレットは、オフィーリアとのシーンでは、あまりおもしろ味がないのに、ガートルードとのシーンでは過剰に官能的なところがある。


[出演]

ハムレット: 藤原竜也
オフィーリア: 満島ひかり
レアーティーズ: 満島真之介
ホレイシオ: 横田栄司
フォーティンブラス: 内田健司 *
ポローニアス: たかお鷹
ガートルード: 鳳蘭
クローディアス/亡霊: 平幹二朗

墓掘り/重臣/役者: 山谷初男
座長/墓掘り相棒/重臣: 大門伍朗
コーネリアス重臣/司祭: 塾一久
隊長/重臣: 廣田高志
ローゼンクランツ/重臣: 間宮啓行
ヴォルティマンド/前口上/役者/重臣: 妹尾正文
オズリック/重臣: 岡田正
ギルデンスターン/重臣: 清家栄一
フランシスコ/重臣/役者/黙劇の王/従者/市民: 新川將人
マーセラス/従者/重臣: 星智也
使者/重臣: 野口和彦
紳士/重臣/役者/黙劇の王妃/兵士: 浦野真介 *
船乗り/重臣/役者/黙劇の毒殺者/従者/兵士: 手打隆盛 *
ルシエーナス/重臣/役者/従者/市民/兵士: 堀源起 *
バナードー/市民/従者/重臣: 松田慎也 *
劇中王妃/重臣/役者/市民/兵士: 砂原健佑 *
劇中王/重臣/役者/市民/兵士: 竹田和哲 *

(*印は、さいたまネクスト・シアター)