あつぎ舞台アカデミー公演「ドリーム・ドリーム・ドリーム season4〜未来のわたしたち〜」(厚木市文化会館 小ホール)


平成26年度 厚木シアタープロジェクト あつぎ舞台アカデミー公演

「ドリーム・ドリーム・ドリーム season4 〜未来のわたしたち〜」

(総監督:横内謙介、演出:横内謙介 鈴木里沙 田中信也、演出助手:串間保彦、ダンス振付:ラッキィ池田 彩木エリ、歌唱指導:上野まり子)


あつぎ舞台アカデミー・キッズパフォーマンスコースのメンバーによる4回目となる公演。

厚木市文化会館 小ホールで、8月30日(土)に、2ステージを観劇。

この30日は、14時開演と、18時開演の2回公演。

今年は、前年より1ステージ増え、翌日(8月31日)の13時開演と合わせての、計3ステージが行われた。

チケットは、全席指定 1000円。

この「ドリーム・ドリーム・ドリーム」、昨年は予約の電話がつながらないうちにチケットが完売してしまい、見られなかったので、一昨年の2ステージを見て以来、2年ぶりだった。ステージ数が3回に増えたせいか、30日の公演には、けっこう空席もあった。そこから察するに、今年は、見たくても見られないひとが出る、という状況にはならなかった模様。

ステージ数を増やしたのは、やはり、一般客にもチケットが回るように、ということがあったようだ。
http://www.townnews.co.jp/0404/i/2014/08/22/248037.html


今回の出演メンバーは、小学4年生〜中学2年生までの、33人。
(→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20140818/p2)

内訳は、女子24人、男子9人。小学4年生3人、5年生9人、6年生4人、中学1年生7人、中学2年生10人。

上演時間は、1時間45分(と、オープニングの「指揮者」さんがいっていた)。途中休憩なし。18時開演の2回目は、1回目にはなかったアンコールが付いて、終演は、19時55分ぐらいになった。


2回のうち、1回を最前列で、もう1回は通路のすぐ後ろの7列目で見た。予約の時点では、2回とも最前列が買えたので、ちょっと迷ったのだったが・・・・客席通路を使用する場面が何度かあったので、座席選択としてはこれでよかったと思う。

一昨年に見た「season2」と較べると、はっきり分かるほどに、全体的な演技レベルが上がっていた。

今回も、短編のお芝居がオムニバスに演じられて行き、その間に何度か、ダンスが入るという構成で、最後は、うた&群舞でのフィナーレとなり、「ドリーム・ドリーム・ドリーム」のテーマ曲「キヅナの翼」もうたわれる。


「未来のわたしたち」というサブタイトルが付いているとおりに、上演された短編作品の多くが、メンバーの子どもたちの夢=15年後の未来(職業)、をテーマにしたものだったようだ。演じられる短編のお芝居は、いずれもコメディベースで、どれもおもしろく見られる。
15年後というと、出演者たちは、24歳〜29歳といった年齢である。

お芝居でメインを演じる子たちは、自分の夢や、現時点で想像する将来像を演劇というかたちに咀嚼して、舞台では自らが演じて見せるのだから、与えられた役を演じるのとはまたちがったハードルがあったのではないか。照れや、恥ずかしさを乗り越えなければ、他のメンバーの理解や共感が得られないだろうし、ひとに見せられるものにはならない。公演としてやる以上は、ステージパフォーマンスとしての客観的なおもしろさも不可欠だ。

子どもたちが自分の「夢」をお芝居にする、などというと、内輪の発表に墜してしまいそうなのに、そこをちゃんと見る側を楽しませるレベルに創ってあって、見ごたえがある。

ただ、こういう「場」で演劇をやってみようという子どもたちは、どこまで本気かはともかく、芸能や舞台の仕事にあこがれる子も多いのではないだろうか? メンバーが舞台で演じた職業が、本当に目指す未来の姿なのか、それとも、もし私が弁護士になったら、みたいな演劇的なイマジンによって生み出されたものなのか、そのあたりの兼ね合いはどうなのかな、とも思った。


オープニングの「未来の私たち」では、数人のメンバーが、15年後のわたしとして、職業人としてのコスチュームで登場する。今回のステージは、2029年のわたしとして、メンバーたちの夢や15年後の未来像が、大きなテーマとなっていることが最初に提示される。
「指揮者」も、オープニングシーンの指揮者でありつつ、高橋栞音さんの夢のひとつが指揮者ということでもあるのかな?

「犬の話」は、飼い主家族からダメ犬扱いされていた「ラッキー」が、「野望犬(やぼけん)」に導かれて、犬のダンスチーム「犬ザイル」「わんわんガールズ」たちと出会い、触発されて、自分が良い犬になれば、飼い主の人間たちをも変えられるかと思い立つ。パロディ+風刺劇の趣があるのだけれど、それ以上に見どころなのは、主役のラッキー役の女の子をはじめとして、犬役の出演者たちが、手作り感たっぷりの犬の操り人形を動かしながらセリフをいい、ダンスもして、演じるというパフォーマンスで、これは、いわば「ライオンキング」における「ダブル・イベント」の手法になっている。

[追記]
写真→
https://www.facebook.com/atsubun/photos/pcb.838805016157428/838803839490879/?type=1&theater

「未来のらく」は、裁判で97連勝中の無敵の女性弁護士が、3つの無罪を勝ち取って、100勝を達成するというお話。主演者の夢=弁護士を「リーガルハイ」のパロディで見せる。
依頼人の小学生は、給食を横取りして食べたことで、3人のクラスメイトから訴えられる。揚げパンを食べられた女の子には、「あげパン、あげパン」といいながら喜んでいたことが、パンを上げると思わせて、パンをくれるのだと被告に勘ちがいさせたのが悪いと主張。えび天を最後に食べようと大事に残していたのを食べられた女の子には、給食を残すと先生に怒られて昼休みがなくなってしまうかも知れないことを心配して被告が食べてあげたのだと主張して、いずれも無罪を勝ち取るが、3人目の、ミルメークコーヒーをとられたという女の子は、ケータイで撮った証拠写真があるという。が、ケータイ持ち込み禁止なのに学校に持って来ていたことがバレてもいいのかとの指摘に、原告が訴えを取り下げて、これで、100勝目。


「ランドセラー」は、レッド、ブルー、イエローのランドセル戦隊ランドセラーが、子どもたちの夢を守るために、夢を食うバクと戦うお話。「ドリーム×3」での戦隊ものは、以前にはタイム巻き戻し隊というのをやっていたから、戦隊ヒーロー路線は、このカンパニーのお約束のひとつなのかな。
3話続きで、「歯科医師を目指す男の子」「動物の飼育員を目指す女の子」「漁師を目指す少年」の夢を守るために戦う。ランドセラーの3人に加えて、「夢 を あ き ら め な い」の文字をひとつずつ背負った「夢隊」という子どもたちがゾロゾロ出て来るところがポイントで、妙に可笑しい。
飼育員を目指す女の子に向かって、動物園にいる動物たちについての疑義を突きつける女の子が、そういう運動をしている団体を紹介するとかいっちゃうところに、ちょっと踏み出した批評精神が覗く。
レッド、ブルー、イエローは、それぞれにキメ台詞とポーズがあるのだが、ブルーのキメポーズのときの動きがなかなか凝っていて、目を惹いた。
(→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20140908/p1)

「未来の遥有」は、ドリームレッドという変身ヒーローが登場する。またもやヒーローものか!と、一瞬、思わせておいて、今度はスーツアクターになりたい男の子の将来像をお芝居に仕立てたもの。


「いっちゃダメ妖精」は、言葉はひとを傷つける刃、口に出してはダメなことがあるんだよ、と警告してくれる男の子の妖精。テニスでコンビを組む仲良しの女の子ふたり(ほのかと、かな)は、試合が上手く行かずに敗けて、お互いに不満を募らせる。いっちゃダメ妖精は、そんなこといっちゃダメ、と止めるが、結局、ほのかちゃんはいいたいことをいってしまい、かなちゃんもいい返して、ふたりは大喧嘩に。いっちゃダメ妖精は打ちひしがれるが、ふたりはまたすぐに仲直り。ときには、いいたいことをいうことも大事で、言葉はひとを傷つけるだけではないと気付く、って話。
ほのかちゃんと、かなちゃんは、なかなか魅せる演技で、ふたりのやりとりは、秀逸!

「未来の晴也」は、お医者さんになった晴也くんが、注射をいやがる患者の女の子をなだめるために、片手遣いのブタの人形や、マジックを見せながら、無事に注射に成功。ここで使われたマジックは、「魔法の絵本」だった。これは、ふつうに市販されていて入手しやすいマジック用品のひとつですね。
看護師さんが、かわいかったな(この子は、オープニングにも看護師さんで登場していた)。


「なぞレター」は、小学校の教室でのラブレター代筆事件。女の子たちの感情や人間関係をシンプルに鋭くえがいていて、コメディタッチではあるが、けっこうシビアなシーンがある。「なぞレター」は、『台本提供:佐貫里奈』とクレジットされている。
矢野遥菜さんは、この「なぞレター」では小学生の役を演っていたが、「犬の話」では飼い主一家の母親役、「いっちゃダメ妖精」では下手で効果音を出す楽器隊、「ランドセラー」では夢隊の「い」の他に「歯科医師を目指す男の子」での生徒役。


「私のパパとママが私のパパとママになった理由(わけ)」は、メンバーのうちの4人が、それぞれ自分の両親の出会い、なれそめを演じる。今回は4人とも女の子で、自身の母親の若い頃を演じて見せる。これは、「パパママ」のタイトルで以前からやっていて、一昨年の「パパママ」の続編というのもひとつあった。
宮ケ瀬とか大黒とか、地名が出て来ると、神奈川に住んでいない身には、それどこ?って感じ。
だけど、この「パパママ」もじっさいに舞台にのせるとなると、簡単ではないよね。自分の両親のこととなると、未来のわたしということ以上にプライベートな部分でもあるから、まず、それをさらけ出さなきゃいけないし、共演するメンバーに自分の両親のことを分かってもらって、演じてもらわないといけない。精神的にも手間のかかるプロセスを想像してしまう。
もうひとつ思うのは、「パパママ」をやれるのは、ある意味、幸せでもあるのだということ。私のようにちょっと複雑な家庭環境で育ったとか、親が離婚していたりすると、さすがに出来ないことだし、そもそも、世の中には、親のなれそめなんて訊けないほど、家族関係が上手く行っていない家庭も少なからずあるのだから。


終盤で、「感謝の手紙」という、メンバーのひとりが手紙を読むコーナーがあった。手紙を読むのは、公演回ごとにちがうメンバーになっていたが、3人とも中学2年生。この、あつぎ舞台アカデミーキッズパフォーマンスコースは、小学4年生から中学2年生が対象なので、中学2年生は、これが最後の公演。中学2年生は10人いたので、出演は今回まで、のメンバーがけっこう多いのだな、という印象。
矢野遥菜さんや、(今回公演でも注目していた)喜代門紋さんも、今年で卒業ということですね。


ところで、ダンスプログラムのひとつに、ダンス・コント「ダンダン・ドゥビズバー」というのがあって、それって何?と思ったら・・・「妖怪ウォッチ」のエンディング曲の「ダン・ダン ドゥビ・ズバー!」がもとになっているんだ。
このカンパニーのダンス(群舞)は、メンバーがみな溌剌としていて、見る目に気持ちがいい。