ニッキー(IMAホール)


ミュージカル座公演「ニッキー」

(脚本・作詞・演出:竹本敏彰、作曲・編曲・音楽監督:玉麻尚一、振付:谷内雪)


光が丘のIMAホールで、6日間8ステージあったうちの、3回を観劇。

初日の8月19日(火)17時開演、22日(金)12時開演、23日(土)16時半開演の3ステージで、見たのはいずれも、山口野乃花ちゃんの出演回。ただし、23日は、開演に遅れたので、厳密には、2回と3/4ステージというべきかも。

公演プログラムは、1000円。

そのプログラムによれば、今年の「ニッキー」再演は、IMAホールとの共催になったとのこと。


上演時間は、1幕、2幕とも60分、幕間が20分。じっさいは、12時開演の回だと、午後2時26分ぐらいに終わる感じ。

昨年とちがって、ロビーの2階へ行く階段は塞がれていたので、ロビー2階のベンチで開演前にのんびり軽食をとるようなことは出来ない状況になっていた。

今回の配役は、子役だけでなく、大人も一部ダブルキャスト(子役のニコルのみトリプルキャスト)になっていたが、大人キャストは役付で出演しない回もアンサンブルで出演していた模様。


「ニッキー」というミュージカルは、おもしろいのだけれど、はじめて見ると、意匠(設定やベースになるアイデア)が先行作品からのコラージュのように感じられて、そこが気にはならないだろうか。

たとえば、(対照的な)ふたりの主人公の心(人格)が入れ替わるという設定は、山中恒おれがあいつであいつがおれで」を原作とする映像作品がいろいろあって、それら以外でも、近年なら「パパとムスメの7日間」とか「夫のカノジョ」などのドラマが思い起こされる。

こうした(人格)入れ替わりもの、というのは、たとえばタイムスリップもののように、もはやドラマや演劇でのひとつのパターンになったのだと思うべきだろうか?

2幕の子役たちによるギャングシーンでは、郡司企画が長年上演しているあの舞台を連想しない訳には行かないし、それら2幕のシーンは、クラーク学園の芸術祭の出し物(のリハーサルと本番)として劇中劇になっているので、2幕はバックステージものの趣もある。劇中劇を駆使したバックステージものとしては、同じ作・演出家による「トラブルショー」の手法が使われているということは、両作品を見ていれば気がつくはずだ。

そんな先行作品のアイデアが用いられていることに多少の引っ掛かりをおぼえつつも、このミュージカルがおもしろいのは、手際のよい展開とコメディ部分の秀逸さ、そしてミュージカルナンバーのよさもあろうけれど、それ以上に、事実上ふた役を演じるに等しいニコル役の山口野乃花ちゃんの達者な演技が、圧倒的にすばらしいからで、それはもう、超絶、すごいのである。

ニコルと入れ替わったニコラスが、ニコルのトラウマ(父親が雨の日に事故で死んだのは、傘を忘れた自分に原因があると思っている)を知って、それを克服させるために、ニコルと似た境遇の靴磨きの少年の役を書き、それをニコルに(劇中劇の)芸術祭で演じさせるという運びには、いかにもバックステージものらしさがあって、いい。


昨年の初演と較べて、ミュージカルナンバーが増えたとのことだが、プログラムのナンバーリストで比較すると、「プレゼン戦争」「ワルワルROCK」「虹色の雲〜パパとの約束〜」の3曲ということになるのかな。

私の記憶がたしかならば、1幕の「プレゼン戦争」は、昨年はセリフだったから、それを今年はうたにしたということかな。このシーンで、前の年に「風と共に去りぬ」で主役を演って、今年の芸術祭では「サウンド・オブ・ミュージック」のマリアを演りたいというのがドロシーで、それに対抗して、「若草物語」を提案するのがオリビアだね。このふたりは、クラーク学園の生徒のなかでは、他のシーンも含めて、いいポジションにいて、目を惹く役。オリビアの「うさぎ」遣いや、スリットを縫い合わせて・・・も印象に残るし。

(それとさ、マリア、マリア、マリア〜♪のところは、同じマリアでも、あれって「ウエストサイド物語」のメロディになっていたよね。なかなか洒落っけがある)


この「ニッキー」は、とにかく、山口野乃花ちゃんの快演に尽きる。いちど見ると、やみつきになる、かわいいコメディエンヌ。

去年の夏に見に行ったときは、出番ではなくて、ロビーでプログラムを売っていた。そのときに、はじめて実物を見た。それで、「トラブルショー」を見に行って、そのかわいくて達者な子役っぷりに、これはすご〜い、と思った。で、今夏の「ニッキー」は、期待値も高かったのだが、それ以上にすごかった。

ニコラスになった山口野乃花ちゃんのおっさんの演技が、痛快にして、爽快!あんなふうに罵倒されたり、蹴りを入れられたら、なんか、気持ちよさそうだぞ、と思ってしまう(笑)。エアギターもめちゃくちゃ格好いいしね。
泣き虫おやじとおしゃべり娘の感動物語、泣かないでパパ、だっけ?←これ、おもしろすぎる(うろおぼえだけど、合ってる?)。

クラーク学園の制服のスカートは、ニッキーのだけポケットが付いている(劇中でポケットを使うからだけど)。ニコルは、うさぎがこわいというのに、うさぎのリュックだよね。

ニコルとニコラスが元に戻るところで、ニコルは、レインコートの下に、次のシーンの靴磨きのニコルの衣裳を着ているのだけど、それが少し見えているのが、なんだかかわいい。

23日のステージでは、カーテンコールのときに、ニコルがお着替えして来なくて、制服のままで登場したけれど、あれはどうしてかな。


8月23日(土)といえば、「ニッキー」の前には、三鷹の星のホールで、14時〜「わたしの星」という舞台を見ていた。「わたしの星」を見るとしたらそこしか予定を入れられなくなって(他に行けたはずの某日は早々にチケットが売り切れてしまった)、でも、当初は、「わたしの星」の上演時間が90分と告知されていたから、それなら、16時30分〜の「ニッキー」は開演には間に合わなくても、5分か10分の遅刻で済むという計算で、座席もわざと列の端っこの席を買っておいた。
が、いざ当日は、「わたしの星」の上演時間は100分とのアナウンスで、じっさいには、110分かかった。

それで、結局、着いたときは30分遅れで、「気弱なニッキー」の終わりのほうをやっていた。せめて、クラーク学園のシーンの前には着きたかったのに。


(蛇足だけれど・・・22日のあの代役は、だれの代わりだったのだろう?次に見るときに確認しようと思っていたのに、すっかり忘れた)