ダディ・ロング・レッグズ〜足ながおじさんより〜(シアタークリエ)


1月9日(水)に、シアタークリエで、

ミュージカルロマンス「ダディ・ロング・レッグズ 足ながおじさんより」(脚本・演出:ジョン・ケアード、音楽・作詞:ポール・ゴードン)

を観劇。午後1時開演。

ロビー掲示の上演時間は、第一幕70分、休憩20分、第二幕70分。

昨年9月に同じ劇場、同じキャストで上演されたミュージカルのアンコール公演として、1月5日から5日間上演された舞台。

この日は、その千穐楽で、キャストのあいさつがあったり、ミュージシャン(下手ソデで生演奏)もステージに登場したり、最後の演奏のあとにもキャストのふたりが出て来るなど、カーテンコールが全て終わったのが、午後3時55分。


公演プログラムは、1200円。出演者はふたりだけで、すでに分かっていることなので買わないつもりだったが、見本を手に取ったら、ミュージカルナンバーのリストと、そのうちの何曲かの歌詞が載っていたので、買うことに。


昨年の初演の際は、あまり関心がなかったのだが、評判がよかったようなので、今回のアンコール公演を見たいと思ったものの、人気公演を甘く見ていて、チケットが買えなかった。ほとんどあきらめていたが、公演日の直前になってチケットが出て来たのをタイミングよく押さえて、見ることが出来たという次第。

見てよかった。これは、すばらしい作品。珠玉の舞台とでもいえばいいか。終盤のシーンでは、泣いてるっぽいお客さんがけっこういたが、でもたしかに、そういう気持ちになる。


出演者は、

ジャーヴィス・ペンドルトン:井上芳雄
ジルーシャ・アボット坂本真綾

ステージは、後ろ(中央から上手へ)に少し高くなったジャーヴィスの書斎があり、その手前と下手側がジルーシャのアクティングスペースとして演じられて行く。

舞台におかれた大小のトランクを適宜積んだり並べ変えるなどして、場面が創られ、ジルーシャが小道具や衣裳をそのトランクのなかから取り出す仕掛けも、洒落ているだけでなく作品の雰囲気をうまく装飾していた。


あしながおじさん」というと、孤児院育ちのジュディ(ジルーシャ)が、その文才を認められて、スミスと名乗る匿名の篤志家の援助を得て、大学に進学し、小説家になり、そして、学友の叔父であり、スミスを称していたジャーヴィスの求愛を受ける。いわばシンデレラストーリーの趣きがあるが、

このミュージカルは、そんなジルーシャの物語に、ジャーヴィス側の視点、心理、行動を書き加えて、登場人物としての両者の比重を五分と五分にして、ふたりの恋愛劇としてふくらませている。コミカルな味付けだが、ふたりの恋の行方はスリリングに展開するので、結末は知っていてもハラハラドキドキ、劇的で心ゆさぶられるクライマックスがやって来る。

ジャーヴィス(の気持ち)をえがくことは、いわば原作の、ジルーシャの手紙と手紙の間や背景を埋めて行く作業でもあるから、観客は、ジルーシャの手紙を受け取ったジャーヴィス側のリアクションも目の当たりにすることになる。

このミュージカルは、ジルーシャを好きになったことで顕在化する、ジャーヴィスの(つまり男性側の)コンプレックスや葛藤を、上手く織り込んでいるのが、いい。ジルーシャに対して、自分が経済的に恵まれ、彼女に施す立場にいることが、かえって負い目になったり、また、ジャーヴィスはスミス氏が自分であるという正体を隠しているために、ジルーシャと真正面から向き合えないという悩みを抱える。そして、ジルーシャが級友・サリーの兄と親しそうなことに嫉妬もする。そうこうしているうちに、本を出版したジルーシャは自立し、経済的にもジャーヴィスの手から離れて行きそうになる…。

ジャーヴィスの内面がえがかれたこのミュージカルに、男性客も深く感情移入出来るのではないだろうか。


見る前は、どうして、キャストクレジットで、ジルーシャよりもジャーヴィスのほうが上に来るのだろう、と思ってもいたが、この舞台は、ジャーヴィスがジルーシャの愛を得ることで救われるお話、なのかも知れない。

劇中、ジャーヴィスが、読み終えたジルーシャからの手紙を書斎の本棚に貼って行くのだが、その手紙を読みたいと思い、双眼鏡を使ってみたが、読めなかった。座席は、ほぼ真ん中ぐらいの列だったが、通路を挟んでいたから、もう数列前だったら読めたか?


ところで、観劇後に、あしながおじさん側をクローズアップしている本とか出てないのかなぁ…、と検索してみたら、こんな少女マンガがあるって。

勝田文「Daddy Long Legs」(クイーンズコミックス 集英社、420円)
http://books.shueisha.co.jp/CGI/search/syousai_put.cgi?isbn_cd=4-08-865337-8&mode=1

あしながおじさん」のお話を昭和初期の日本に翻案したマンガで、コミックスとしては、2006年に出ている。