新・幕末純情伝 (シアターコクーン)


7月18日(水)と、7月22日(日)に、シアターコクーンで、

つかこうへい三回忌特別公演「新・幕末純情伝」(つかこうへい 作、岡村俊一 演出)

を見た。主演は、桐谷美玲

18日の14時開演の回は、今回唯一の平日昼公演だった。

22日は18時開演の夜の部を観劇。


公演プログラムは、1500円。他に、ポスターを500円で販売していた。

上演時間、2時間20分。休憩なし。


18日昼は、2階席はほとんど空いていた。

22日夜は、千秋楽とあって、立ち見のひとも何人かいたことからして、座席は売り切れていたと思われる。カーテンコールでは、「飛龍伝'90」の予告編をやったりもして(ただし、上演予定はないとのナレーション)、終了は、午後8時35分。


久しぶりに、つかこうへい作の芝居を見たのだったが、意外にも、あまり抵抗なく楽しめてしまったのは、自分が年をとったせいなのか、それとも、演出がつか氏ではないからなのか、あるいは、この作品だからなのか。女性キャストのふたりを除けば、ほとんど知らない、予備知識や思い入れのないキャストが多くて、こだわりなく見られたためか…

とはいえ、感情的で暑苦しいセリフの応酬で、下ネタや差別用語が飛び交い、コンプレックスをほじくり回しつつ、役者たちはハイテンションでわめき合う訳だが、そのセリフ(声)には、けっこう高揚させられるものがあって、聴いていて心地よくもあり、設定やストーリーは幕末ものの常識を外れた無理筋なのに、それでも、もっともらしい結末にたどり着く力技は、演劇的なおもしろさ。
(ただ、あのラストシーンは、いただけない。穿った解釈をすることも出来なくはないが、あれは、私の場合、視覚的にダメ…)

最初のうちは、女・沖田総司の殺陣に不満をおぼえたが、でも、剣さばきが上手くてキマり過ぎても、女としての揺らぎがウソっぽくなってしまいそうだから、ほどよいバランスか。


ところで、この芝居は、沖田総司を女だったとしていること以上に、ミカドの血筋に生まれた姫君(終幕では天皇を弟だという)の「貴種流離譚」としてつくっているのがミソだと思う。

やんごとなき血をひく赤子が菊一文字の刀とともに差別される者たちの棲む場所に捨てられ、肺病という宿痾を負う。そんな総司は勝海舟の弟として育てられ、土方歳三に出会って女にされ、坂本龍馬に惚れられて「一発やらせろ」と迫られる(坂本龍馬は短小で早漏だけどテクニックには自信があるのだと)。勝もまた総司を愛していたが片キンタマで役に立たず。そんな勝の尻はホモの岩倉具視にねらわれている。と書くと、莫迦々々しいが、この芝居の沖田総司は、高貴な血筋でありながら差別の宿命を背負い、女だてらに人斬りという汚れ仕事を一手に引き受けるという図式になっていて、つまり、聖・俗を縦断し、身分や氏素性を超越した存在になっている。


中井知鶴ちゃんは、いちおう男の子の役だけれど、ほとんどそのままだよね。よくいえば初々しいし、別のいい方をすると、ここまでズブの新人って感じの子には、近頃、なかなか舞台でもお目にかかれないのでは。とっても貴重。

終盤に登場する一馬という役より、その前に、ちょろちょろ出て来るほうがおもしろかったな。猿は何だっけ、さる吉?

カーテンコールは後列で、前に立つキャストに隠れて見えないし、せっかく前列に出たときも、お辞儀を終えるとさっと下がっちゃって、またよく見えない。たとえ一瞬でも、意識して客席へ顔を見せるようにしてくれないと。(千秋楽カーテンコールの「予告編」では、若干13歳、と紹介されていた)

パーカーにハーフパンツ、スニーカーで、なんだかそこいら辺にいる子どもみたいな衣裳だった。他のキャストのように、ジャージでもかわいかったかも…。

なお、今回公演のプログラムには、中井知鶴ちゃんは、『2011年スカウトにより発掘され、』と書いてある。インタビューも少し載っている。