ジキル&ハイド (日生劇場)


3月28日(水)は、日生劇場

「ジキル&ハイド」

を観劇。

東京公演の千秋楽。

座席は、グランドサークルの正面と、2階席の最前列と、どっちにしようか迷って、後者を選択。

本当は、某ミュージカルアカデミーの卒業公演が見たかったのだが、当たらなかったのだから仕方ない。一部情報によれば、今年もまた、あめりちゃんがリトル・コゼットだったというから、石井晏璃ちゃんのリトル・コゼットを見ることが出来たひとの幸運度はメガトン級だね。それにひきかえ、外れた私はといえば、不運もここに極まれりで、この日、「ジキル&ハイド」を見ているようでは、まさに、観劇人生の敗残者といったところか…。いまだに、精神状態はどん底である。

そう、どん底。「どん底」といえば、ルーシー、かわいいルーシー。

ということで、「ジキル&ハイド」。

午後1時30分開演。

ロビー掲示の上演時間は「第一幕 1時間20分、幕間 25分、第二幕 1時間10分」。ただし、日生劇場公演の千秋楽だったので、予定よりも長くかかった。

公演プログラム、1500円。買うつもりはなかったが、第一幕がはじまってまもなく、「Lost In The Darkness」と「Facade」の間に、聴いたことのないジキルのソロナンバーがあって、おどろいたので、休憩時間にプログラムを買って確認。

「I Need To know」というナンバーだが、これは、鹿賀丈史主演版のときにはうたわれていなかった。鹿賀版ではカットされていたのだろうか、それとも、あとから加えられた曲なのか?(闇の中でからすぐに嘘の仮面へ行くのがよかったのに、ちょっと間延びした印象)


今回の石丸幹二主演版では、第二幕の、ジキルとハイドの「対決(Confrontation)」のシーンが、ルーシーを殺害したその部屋からはじまって、死んだルーシーを乗せたベッドを舞台に残しながら、だんだんとジキルの研究室へセットが替わって行くというやり方をしていたが、この転換には違和感があったし、ハイドがルーシーを殺害した直後に、殺害現場でジキルに戻ってしまったのでは、ハイドの封じ込めの成否に関わらず、もはやその時点でジキル自身が責任から逃れられないのでは?


ミュージカル「ジキル&ハイド」の魅力のひとつは、何といっても、エドワード・ハイドが、腐った権力者たちを次々に血祭りにあげて行く爽快感にある。別人格に変身して、天誅を下したり報復が出来るのなら、身の破滅と引き換えにしてもやってみたいと思うのは、閉塞感に満ちた社会に生きるしがない庶民のひそかな願望でもある。加えて、かわいい娼婦を相手にしたサディスティックな欲望もえがかれていて、このミュージカルには、男性客が感情移入しやすい要素が詰まっている。

だけど、この舞台を見ていると、エマの父・ダンヴァース卿の存在が、どうにも腹立たしい。今回公演からキャストが変わって悪役っぽくなっていることもあって、とくにそう感じる。他のセント・ジュード病院の理事たちは端から敵役だし、ハイドに殺されて、溜飲が下がるのだけれど。

それにしても、「時が来た(This is The Moment)」は、名曲だ。件のシーンが近づくと、さあ、時が来たの時が来た、と舞台を見ながら気持ちが期待で先走る。ミュージカルに名曲は数あれど、これほどのものはなかなかない。