一命


講談社文庫の6月の新刊として、

滝口康彦「一命」(476円税別)
http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2770091

が出ている。

収録作品は、「異聞浪人記」「貞女の櫛」「謀殺」「上意討ち心得」「高柳父子」「拝領妻始末」の6編。監修者(末國善己)は巻末の解説で、滝口康彦の代表作をセレクトしたベスト盤と書いている。

書名が「一命」となっているのは、本年公開予定の、市川海老蔵主演映画のタイトルに合わせたものだろう。「異聞浪人記」は、映画「切腹」の原作として知られるが、今回ふたたびの映画化がなければ、この短編集の刊行はなかったかも知れない。

この「一命」が出るまで、滝口康彦の時代小説は、新刊ではもうほとんど入手出来なくなっていた。私がそれを知ったのは、昨年6月のこと。THEATRE1010で上演された、福岡県 筑後市民ミュージカル「彼方へ、流れの彼方へ」の東京公演を観劇後、そのミュージカルはどこまでが原作どおりでどこからがミュージカルのオリジナルストーリーなのかを知りたくて、原作の滝口康彦「千間土居」を読みたいと思って探したところ、かつては、講談社文庫に何冊もあったはずの滝口康彦の本はいずれも絶版状態になっていると分かった。

それら文庫版の滝口作品は、電子書籍としてなら入手が可能で、結局、「千間土居」が収録されていた講談社文庫版の「拝領妻始末」をケータイにダウンロードして読んだのだったが、その電子書籍には「千間土居」のほか、「拝領妻始末」「上意討ち心得」「異聞浪人記」が入っていて、「一命」の収録作品のうちの半分はこの本から採録された格好だ。


ところで、「拝領妻始末」は、映画化され、舞台化もされていて、そのタイトルは広く知られている作品と思うが、原作の小説は映画のような結末ではない。その小説の最後で、藩主・容貞はただちに喪に服すことになる、とあるのはどういう意味?生母の死で藩主が喪に服すことで、近く恩赦があって許されるだろうということ?(今回「一命」を買ったので再読してみたのだが、やはり分からない…)