売らいでか! 亭主売ります(シアター1010)


東宝の2011年ツアー公演

新版 喜劇「売らいでか! 亭主売ります」
 岸宏子 原作(「ある開花」より)
 花登筺 脚本、楠美昌 監修
 野田昌志 潤色、池田政之 演出


新春の1月7日(金)〜1月12日(水)まで、追加公演を含む8ステージが上演されたシアター1010公演から、2ステージを観劇。

シアター1010公演の上演時間は、およそ
 第1幕 1時間20分、休憩 25分、第2幕 1時間10分

午後1時開演だと、終演は、3時55分頃。

公演プログラム、900円。
「売らいでか!」ツアー公演のスケジュールは掲載されておらず、1〜2月のツアー前半の予定のみが印刷された紙が挿み込まれていた。出演者全員の名前にふりがなが振ってあるのが、とても親切。


シアター1010公演は大変人気があったようで、私が見た2回はいずれも満席の盛況。聞いた話だが、1月7日の初日も「完売御礼」の貼り紙が出ていたとのことである。

ロビーでは、2月3日(木)のかめありリリオホール公演のチケットを、リピーター割引(7800円→7000円)で販売していた。


注目の子役、山内まり子役は、

木村心静・柄沢怜奈 (ダブルキャスト)


昨年の、東宝のツアー公演(博多座中日劇場 他)「三婆」の正子役と同じふたりがキャスティングされている。「三婆」の子役として出演し、揃って好評だったのでしょう。


私が見た日の山内まり子役には、2回とも、柄沢怜奈ちゃんが出演していた。


配役を書いておくと、

浜木綿子(山内なつ枝)
左とん平(山内杉雄=なつ枝の夫)
加藤茶(石上太郎=神代産業・支配人)
仁支川峰子(神代里子=神代産業当主・未亡人)
正司花江(ぎん=なつ枝の姑)
高嶺ふぶき(きく子=神代家の女中)
遠藤久美子(敬子=神代産業・事務員)
小野寺丈(石上弘=太郎の弟)
臼間香世(節子=神代産業・事務員)
荒木将久(南出=元校長)
幸木三果(すみ子=神代家・女中)
森池夏弓(富永かず子=杉雄の兄・松雄の戦友の妻/雑貨屋の女房)
清水由佳(幸子=応募に来た娘)
渕真弥子(きみ=神代家・女中)
木高一成(中山=銀行支店長/下駄屋の旦那/神代産業・事務員)
池田貴宏(川口=神代産業・事務員)
木村心静 劇団東俳(まり子=なつ枝の娘)
柄沢怜奈 劇団ひまわり(まり子=なつ枝の娘)


亭主を浮気相手の未亡人に50万円で売り飛ばした主人公が、その金を元手に女だけの組紐工房の会社を興し、貧乏から一転、女社長となり、最後は犬猿の仲だった姑までも会社に引っぱり込んで大成功、というウーマンパワーが痛快な人情喜劇。

といっても、その面白さは、かつてのヒット芝居を見るという意味でのそれであって、さすがに2011年の「いま」からすると、「昭和のお芝居」そのものともいえる。たとえば、この芝居でえがかれているようなウーマンパワーは、それこそ昭和の時代には、女性の団結・社会進出的な爽快さも観客に与えたのだろう。いま見ると、懐かしさと同時に、高齢化してしまった主演者の姿に一抹の寂しさと、また、時代の変化という抗えない力をも感じてしまった。もう少し早くに見ておくべき舞台だったと思う。

私の親世代(60代半ばより上)の、とくにご婦人方にはウケがいいようだが、こういう芝居を見ると、笑いの感覚におけるジェネレーションギャップを強く感じる。

転換ごとに幕前芝居が入るのは、巡業仕様であろうか?プログラムによると、脚本にも手が入っているとある。

私が「売らいでか!」を見たのは今回がはじめてだったが、手もとに、2005年3月の博多座公演のプログラムがある。それを見ると、大劇場での上演では、もっと出演者が多く、祭りや、ホテル建設反対運動のシーンに大勢が登場するなど、場も多少異なり、また、派手なフィナーレが付いたりもしたようだ。今回の巡演では、神代産業の支配人は「石上兄弟」になっているが、博多座公演のときは「石上親子」になっている。今回公演での「富永かず子」という役は、博多座公演のプログラムには載っていないのだが、山内杉雄の兄がシベリア抑留中に亡くなっていたというエピソードは、もとからあったものだろうか?


カーテンコールは、主題歌(?)に乗せて、子役を含めた出演者全員が登場。新春公演とあってか、カーテンコールでは、手ぬぐい撒きが行なわれた。

この芝居は、昭和31年〜33年の伊賀上野が舞台になっているが、劇中のまり子が貯金箱に貯めていた「501円」は、いまだといくらぐらいに相当するのだろう。いや、それより、姑をおまけに付けて亭主を売った「50万円」は、今日だとどのくらいの金額になるのかな?


子役のまり子は、押入れからの登場が、楽しい。一幕の、布団のなかからババァ(姑)が現れて、りんごを持ったまり子がびっくり、のシーン。びっくりしたままの時間は、けっこう長い。


会場のロビーで、

帝国劇場100周年記念読本「帝劇ワンダーランド」(2190円+税、ぴあ)

を売っていたので、買った。

2003年に帝劇で上演された、浜木綿子主演の喜劇「口八丁手八丁!」というのを見たいな、と思った。