芝居屋 風雷紡「墨を塗りつつ」(サンモールスタジオ)
8月14日(土)に、サンモールスタジオで、
芝居屋風雷紡 第四廻公演「墨を塗りつつ」
脚本:吉水恭子、演出:中村暢明(JACROW)
を見た。
過去ログのこの公演である。→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20100809/p1
午後2時開演で、上演時間は、(休憩なしの)2時間。4時終演。
客席は、おおよそ↓のように、逆L字形の配置。
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舞台 || 2列
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5列
↑客席入り口
全席指定で、正確に数えた訳ではないが、所見の回の観客は、60人ぐらいだったか。空席が4、5席あった。
小劇場というと、観客をぎっしり詰め込むイメージがあるのだが、60数席という座席配置は、息苦しさがなくて、よかった。
「墨を塗りつつ」は、終戦直後の時代、当主を喪って傾きつつある工場経営者一家のお話。身体の弱い長男が跡を継ぐことになったところに、死んだにちがいないと思われていた次男が戦争のトラウマを抱えて帰還する。そして起こる殺人事件。
たとえてみれば、斜陽+B、C級戦犯問題+横溝正史っぽい世界、といった感じであるが、そのいずれもが中途半端で、見終わってから気分がモヤモヤして仕方がない。
ミステリー仕立てになっていて、長男夫婦の娘・絹代(=お絹。子役)が運んだ水を飲んだ大人(お絹からみると、祖父と母)が続けて不審死を遂げ、お絹に殺人の容疑がかかるなか、帰還した次男は姪であるお絹を庇って身替わりに殺人の罪を着るが、犯人はお絹ではなく、真相は別にあるという結末なのだが、残念ながらこの肝心のミステリーの部分に全く説得力がないため、終わり方も唐突。いったい、この芝居を見ていた2時間は何だったのだろうと、虚しい気持ちにさせられた。
家族の不審死が重なり、まだ幼少の娘に疑いがかかるという展開はドラマとしても面白いのに、後がいただけない。どう見ても犯人ではあり得ない次男が身替わりになるのはいくら捜査関係者が絡んでいても無理があり過ぎるし、最後に明らかになる真相(?)にしても、犯人の動機がさっぱり分からない。動機がはっきりしない上に、犯人は使用人でしたでは、ミステリーとして成り立たない。
そもそも、登場人物にしても、その多くは説明不足で、謎だらけ。とくに、女中たちや使用人は、この芝居ではキーパーソンのはずなのに、バックボーンや人間関係はほとんど不明瞭なままにされている。そんな使用人を犯人にするのは、ミステリーとしては反則だろう。
出演者の衣裳の、白足袋や靴下が汚れ過ぎなのも気になった。だんだん汚れて来るのなら仕方がないが、昼夜公演の昼の部なのに、はじめからずい分と汚くて、足裏は真っ黒。よっぽどセットが汚れているのか、それとも衣裳にかける予算が少ないのか。まさか、あんな汚いのがリアルだなんて思ってわざとやっているのではないよね?立ち回りの稽古でもして来て、そのまま舞台に出たかと思ってしまうきたなさ。あれでは、家が没落するのももっともではある。