おくりびと (赤坂ACTシアター)


6月4日(金)と、6月6日(日)に、赤坂ACTシアター

舞台「おくりびと」(作:小山薫堂、演出:G2、音楽:久石譲)

を見た。

4日は昼のみで、午後2時開演。6日は東京公演の千秋楽で、見たのは夜の部で、午後6時開演。

上演時間は、1幕70分、休憩15分、2幕70分。

公演プログラムは、1500円。


出演者は、過去ログ(http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20100429/p1)のとおりだが、子役(それぞれダブルキャスト)は役名を付して改めて書くと、


 小林哲士:  石田愛希・武田勝
 松平勇:   新井雄貴・高田優
 内田奈津美: 望月ひまり・水野由結
 軽部政治:  原田海人・坂口淳


いただいたコメント(→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20100429/p1#c)も参考にすると、子役は「石田愛希、新井雄貴、望月ひまり、原田海人」「武田勝斗、高田優輝、水野由結、坂口淳」という組分けになっていたようだ。


6月4日の観劇時には、東京公演(〜6日まで)のリピーターチケットをロビーで販売していて(S席10000円→9000円)、座席も選べます、といっていた。が、そのときは、まだ、6日に再見するとは決めていなくて、リピーターチケットは買わなかった。


さて、舞台は、映画「おくりびと」の7年後という設定。演出家の言葉に「歌のない音楽劇」とあるように、劇中の音楽は「弦楽四重奏+チェロ+クラリネット」による生演奏。

主人公・小林大悟(中村勘太郎)と妻・美香(田中麗奈)は、息子の哲士がもうすぐ小学校へ入学することを喜んでいた。大悟は哲士にチェロを教えているが、弦楽器の教室が出来たことを知って、息子をそこに通わせることにする。チェロを弾く子はめずらしく、哲士は他の子どもたちから歓迎されるが、その音楽教室には、大悟が納棺師だということを知る少年も通っていて、納棺師という職業への偏見から、哲士はいじめられるようになる。自分が人の死に関わる仕事をしていることを息子にきちんと話さなければ、と思いつつも、そのきっかけが掴めない大悟は、音楽教室で喧嘩をして相手の子に怪我をさせた哲士に、他人を傷つけるくらいなら逃げろと諭すのだが、ある日、そのいじめっ子から逃げようとした哲士が交通事故に遭い、死んでしまう。

開演前にプログラムを斜め読みしていたので悲劇が待ち受けていることは予想していたが、半ば過ぎに、主人公夫婦の子どもが死んでしまう展開は、ちょっと衝撃的(プロットの段階で賛否があったというのも、なるほどと思う)。哲士をいじめていた子も救われないままである。よくある商業演劇なら、主人公の仕事への姿勢と親子の絆が偏見を乗り越え、子ども同士も和解するという結末へと導かれるのだろうが、この舞台はそうした予定調和を裏切って、後半は、子どもを失った若い夫婦の悲しみとふたりが再生に踏み出すまでをえがく。

(悲しみに我を忘れる大悟こと勘太郎丈の鼻水がものすごかった!)


哲士役の子役、武田勝斗くんがとっても上手い。演技やセリフがナチュラルで、たたずまいも子どもらしく感じがよく、舞台前半の親子のシーンが印象深いものになっていた。その分、ニ幕での悲しみも深まった。

哲士役は、事故に遭ったあとも「遺体」として、納棺されるまで出演するなど、しどころの多い役。劇中、チェロを弾くシーンもあり、「キラキラ星」(というタイトルでいいのかな)を弾いていた。

この子役をもういちど見たいと思い、東京公演のいちばん最後のステージなら再見がかなうのではないかと思って、当日券で観劇した6日の夜にまた見ることが出来た。


大悟と哲士の「いしぶみ」のシーンで、哲士が大悟からもらった石を上手のソデヘ投げ捨てるところで、6日夜は、投げた石がセットの壁にボカッとぶち当たった。

親子3人が流れ星に願い事をするうち、なぜか流れ星に「愛」を叫ぶことになるってのは、主役が新婚で奥さんが「愛」だからという、そういう含みなのかなぁ?


この舞台は、序盤で、大悟が犬(ペット)の納棺をさせられる。また、最後は、大悟が納棺だけでなく、介護の仕事もはじめるということになる。大きな需要がありながらも様々な問題をはらんでいる介護や、ペットの葬儀という問題をドラマに織り込んでいた点には注目したい。

難をいえば、オープニングで、キャストが中途半端なダンスを踊るのが、まるでキャラメルボックスのようで、どうなることかと思ったのと、場面転換のときにキャストが道具の出し入れをすることがあり、そんなときに小芝居が入ったりする点は、どうも私の好みではなかった。

また、物語は、大悟が、哲士の事故死のきっかけをつくった少年の祖母の納棺を行なうシーンで終わるが、「遺体」を着替えさせる大悟の動きは、さながら舞踊のようで、歌舞伎俳優らしい見せ方をしていたが、ただ、それがかえって不自然に感じられた。音楽が生演奏だから、ということもあったのかも知れないが、現代劇に撤して、もっとふつうに演じたほうがよかったのではないかとも思う。


カーテンコールは、子役4人が最初に登場。6日夜は、東京公演の千秋楽だったからだろう、4日よりも回数が多く、ミュージシャンたちも舞台に下りて来た。

今回は、5列目と9列目で見たのだが、2階建てのセットの2階部分での演技が、1階前方(E列)の座席からだと見づらかった。といって、I列だと通路が挟まるせいか、視界は良好だが舞台は意外と遠い感じ。