「コースト・オブ・ユートピア」(シアターコクーン) 3部


9月17日(木)に、シアターコクーンで、

「コースト・オブ・ユートピアユートピアの岸へ」
(作:トム・ストッパード、翻訳:広田敦郎、演出:蜷川幸雄)

を観劇。

この公演は、土日祝休日に休憩込みで10時間超の3部通し上演、が基本になっているが、期間中の平日に3日連続で各部ずつ3部を通すという日程も組まれ、これが昼セット・夜セット、昼セットの計3回ある。1日で3部通しの日は各部ごとのバラ売りはないが、平日3日連続の上演では、セット券の残りを各部券として販売する、と案内されていた。

ということで、当日券を買って、3部のみ(昼の部。2時開演で、ロビー表示の上演時間は、休憩を含めて3時間5分)を観劇した。

3部を見ることにしたのは、↓のような次第。
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20090915/p1(「コースト・オブ・ユートピア」に出演中の子役(訂正あり))


入場の際は、セット券で15日から3日続けて見るお客さんと、この3部のみ観劇のお客さんの入口を別けてあった。

入口でチラシ類といっしょに「配役表」が配付されるが、この配役表は、子役の出番がずれているところがあり、そのまま信じると、先般の拙ブログのエントリーのようにまちがえてしまう。(千秋楽までに修正される見込みはあるのだろうか?)

公演プログラムは、2000円(袋付き)。子役の出演に関しては、プログラムを見れば大丈夫。


客席で舞台を挟むセンターステージ形式というのは、チラシ等で知っていたが、従来の舞台側に作られた客席が、階段状に10列以上もあって、見る側にとっても、向こう側の観客の存在がいささかの圧迫感になる。

ステージ部分のスペースは意外と小さく、そこに、机や椅子など、シーンごとに必要な道具を出し入れしながら、進行する。開演前は、ステージ部分を覆うようにカーテン状の白い幕がかかっていて、ライトを当てると透けるこの幕が、場面転換のときやスローモーションのシーンなどで適宜用いられる。


ロシアの歴史なんて知らないし、1部と2部を見ていないために主要登場人物たちの関係がよく分からなかったりもするが、それでもけっこう面白く見られたのは、祖国ロシアの社会改革を目指して国外で活動する思想家・ゲルツェンのサロンと、彼の子どもたちが成長して行く家庭劇を交錯させてえがく流れの妙による。また、子役の出演シーンが多いので、飽きない。

阿部寛のゲルツェンが、いいキャスティング。何よりこういう芝居は、パッと見てすぐ分かる、でかくていい男が主役を演るというのが重要だと思った。でないと、10時間どころか、3時間ももたないかも知れない。それだけでなく、声も通っているし、ビジュアルのよさだけでない、役としての「たたずまい」に惹きつけられる。

ゲルツェンとオガリョーフ(石丸幹二)の友情、ナターシャ(栗山千明)をめぐっての関係が、面白かった。でも、あらすじを見ると、2部では、ゲルツェンは妻の不倫に苦しんだはずなのに、後年、今度は自分が友人の妻と出来ちゃうのって、芝居にするのにはもってこいの生き様というべきか。バクーニン(勝村政信)の変貌ぶりは、その上手さにびっくり。

農奴解放の実現に影響を及ぼしたゲルツェンも、ほどなく、時代の流れに取り残され、終幕を迎えるが、プログラムを見ると、この芝居の3部は、1868年で終わるようだ。奇しくも、日本では、ちょうど明治維新の年である。


3部で、タータ・ゲルツェンと、その後、妹のオリガ・ゲルツェンを演じる大出菜々子ちゃんが、セリフも明瞭で、何よりかわいく、素直な演技で好感度ばつぐん。この役は出番が多くて、タータ・ゲルツェンを演ったあとに、(休憩後は、少し成長した)オリガ・ゲルツェンになる。
家庭教師(麻実れい)といっしょに勉強するところや、テーブルの上で踊ってとげがささっちゃったり、オリガになってからは、客席通路(階段)を使っての出入りもあるなど、見どころが多い。タータ役とオリガ役では、衣裳だけでなく、かつらの髪の長さがちがえてあった。

木村心静ちゃんは、あんなに小さいのか、と思ったり。

坂口淳くんは、劇団ひまわりのサイトの写真よりも、実物のほうがいい。3部で演じるヘンリー・サザーランドは、メアリー・サザーランド(毬谷友子)の息子役で、オガリョーフを助け起こすのと、あとハーモニカを吹くのだけれど、帽子を目深に被っているので顔がよく見えない。

ただし、所見の回は、カーテンコールに子役の4人も登場したので、そこで顔を見ることが出来た。




この公演の子役を、役名を付して、おさらいしておくと、

「三村和敬」3部(サーシャ・ゲルツェン)

「桐山和己・坂口淳」1部(スケート場の子供)→2部(サーシャ・ゲルツェン)→3部(ヘンリー・サザーランド)

「首藤勇星・鈴木知憲」1部(スケート場の子供)→2部(コーリャ・ゲルツェン)

大出菜々子・佐藤日向」3部(タータ・ゲルツェン/オリガ・ゲルツェン)

木村心静・清水詩音」3部(オリガ・ゲルツェン)


これを、成長に従って、子役〜複数のキャストが引き継いで演じる役ごとに見ると、

サーシャ・ゲルツェン:「桐山和己・坂口淳」(2部)→「三村和敬」(3部)→遠山悠介(3部)

タータ・ゲルツェン:「大出菜々子・佐藤日向」(3部)→美波(3部)

オリガ・ゲルツェン:「木村心静・清水詩音」(3部)→「大出菜々子・佐藤日向」(3部)→高橋真唯(3部)

となる。