船に乗れ!


最近、2巻目が刊行された(全3巻の予定らしい)、藤谷治「船に乗れ!」(ジャイブ)

1巻目の「船に乗れ! 1 合奏と協奏」は、なかなか読ませた。私立の音楽大学付属高校が舞台のこの青春小説、まるっきりのフィクションなのか、それとも、自伝的な作品なのか、あるいは、自伝とはいえないが著者の高校時代の経験がベースになっているのか、そのあたりの虚実に面白さがある。

とはいうものの、2巻目の「船に乗れ! 2 独奏」を読み終わると、主人公のあまりの身勝手、思い上がった性悪ぶりに、不快の極みである。

チェロ専攻の主人公の少年がドイツに短期留学していた間に、付き合っていたヴァイオリン専攻の女子生徒が、知らない男と関係、妊娠して退学することになり、蚊帳の外におかれたチェロ弾きの少年は、その腹いせに、音大創設者の孫という立場を利用して、妊娠事件とは何の関係もない教師をひとり、退職に追い込む。

著者の藤谷治は、1963年生まれで、洗足学園高校音楽科から、日大芸術学部映画学科卒業、とある。「船に乗れ!」の時代設定は、著者の高校時代に合わせたようだし、音楽科から音大へ進学していない経歴は、いかにも、小説の主人公っぽいが・・・藤谷治洗足学園音大の創設者の孫、ということでは、まさか、ないよね?