眉山(明治座)初日雑感


12月2日(日)に、明治座で「眉山 びざん」(原作:さだまさし、脚本:齋藤雅文、演出:栗山民也)を観劇。

この日、初日。11時30分開演。二幕構成で、3時間弱(30分の休憩を含む)。


子役の配役は、追記済みの過去ログ↓にある通り。
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20071125/p1

若手アクトレスについてや、上演時間等は、↓に書いた通り。
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20071203/p3


この「眉山」という舞台、周囲には涙をぬぐうひとや、鼻をすするひともいたことからすると、原作を読んだり、映画を見て感動したひとが、その感動を追体験するにはいい舞台なのだろうか?あるいは、設定自体に、ひとの気持ちを揺さぶるものがあるのだろう。


東京をひとり離れ、知る辺もなかった徳島の地で女手ひとつで娘を育て上げた母 龍子(宮本信子)と、私生児として生まれ、大人になってからも母の生き方に反発とわだかまりを捨てきれない娘 咲子(石田ゆり子)。
龍子が末期がんを宣告されたことをきっかけに、咲子は母を看るために徳島へ戻るが、唯一の家族である自分に相談もなく献体を決めるなど、なおひとりで毅然と物事を進める龍子に、咲子はさびしさと反感を禁じ得ない。

阿波踊り人形浄瑠璃など徳島の風物を背景に入れつつ、死が近づく母と向き合いながら、咲子が母の過去を知り、その生き方を受け容れて行く心情が、舞台の眼目になるべきだと思うのだが・・・どちらかといえば、龍子をとりまく人情劇ふうの展開が目立つ。

咲子の父親がどんな人物で、咲子が生まれる以前に、龍子との間にどんないきさつがあったのかは、咲子が母を理解する上で重要な、ストーリーの核になるはずのことなのに、舞台の終盤になってようやく篠崎孝次郎(山本學)が登場し、彼が龍子のベッドの脇で語るセリフで事情が明かされるのでは、辻褄合わせのように聴こえてしまう。
このあたりは、咲子による母の過去探しとして、もっと丁寧に見せて欲しいところ。普段の明治座と同様に、三幕仕立てで2回の休憩を入れて4時間弱の芝居にすれば、時間的にも充分可能なのでは。

また、末期医療や患者のクオリティ・オブ・ライフ、献体といった微妙で繊細な問題を織り込んでいながら、(咲子の父親である)篠崎という人物が医者であること、彼も妻を看取った経験を持つなどの設定が、ストーリーに活かされなかったのは、残念。

劇中では、龍子の入院先の医師 寺澤(高橋和也)と咲子の恋愛譚もえがかれるが、ふたりが出会うエピソードが、いただけない。いくら龍子に啖呵を切らせるためとはいえ、入院患者の憩いの場でもある病院の中庭で、寺澤と看護師が患者の悪口や噂話に興じているという図は、あるべきではない。現実には、そういう医者も病院もあるかも知れないが、舞台のヒロインの相手役なのだから、もう少し気持ちのいい登場のさせ方をするのが脚本家の工夫というもの。・・・もし私が、入院患者の家族として同じ場面に遭遇したら、そんな医者や看護師がいる病院とは縁を切るために、転院させることを真剣に考えるだろう。


第一幕から回り舞台を多用しての場面転換がつづくのが、明治座ではめずらしい演出。

花道は使っているが、見えなくても、あまり問題はない。山本學さんのファンなら見えたほうがいいか。

主役のふたり、宮本信子さん、石田ゆり子さんはマイクを使用で、うなじにコードが見えていたので、胸ではなく、髪やかつらを通して仕込んでいた模様。石田ゆり子さんの声にはとくに不自然さは感じなかったが、宮本信子さんのセリフはマイクを通していることがあからさまで、違和感があった。


子役(http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20071125/p1)は、それぞれダブルキャストで「亀山きらら」「患者」(女の子)「患者」(男の子)の3役。

初日に出ていたのは、國馬綾乃さん、芥川結香さん、伊藤瑞稀くんだと思うが、芥川結香ちゃん以外ははじめて見るので、ちがっていたら、ご指摘を請うもの。

亀山きららは、龍子と同じ部屋の入院患者のひとりで、同じ役で、病室のシーンに一、二幕とも出演がある。

患者役の男の子は、最初の場(病院の受付、玄関)にパジャマ姿に出るので入院している子どもと思われるが、その後の出演シーンでは、同じ男の子の退院後なのか、別の子どもになっているのかは不明。

患者役の女の子は、まず最初の場は、幕が開くと、長椅子に座って会計か診察の順番を待っている。いわゆる板付きだ。となりにお母さん役のひとがいて、芥川結香ちゃんは、絵本を見ている。絵本は「ばすととらっく101」とかいうタイトルで、帰宅後に検索してみたら、むかし講談社から出た「101絵本シリーズ」という絵本のなかの一冊のようだ。

そのあと、芥川結香ちゃんは、第一幕は「霊山寺」の場に、観光客(?)らしき家族連れの子どもとして出て来た。第二幕では、阿波踊りの子ども役で出て、龍子の最期のシーンに、咲子の幼少期のイメージで登場。セリフはないが、出番も多く、子役としては、なかなかいい役どころだ。