映画「そのときは彼によろしく」

「そのときは彼によろしく」
(平川雄一朗監督、いずみ吉紘・石井薫脚本)を見た。

あんなところに廃車になったバスがあって、なかに入ってみると、女の子(花梨=黒田凛)が寝ている。・・・こんなことが本当にあれば、びっくりだ。おまけに、そのひみつきち(秘密基地)では、犬まで飼っているのである。男の子ふたりが水草好き(智史=深澤嵐)と絵描き(佑司=桑代貴明)、という設定が、ともに繊細な感じで、いい。転校生の智史、施設で暮らす花梨と佑司の3人はそれぞれに不安や屈託を抱えながらも、濃密な子どもの時間を共有し、そして別れのときが来る。

大人になった3人の回想として挿し込まれる13年前のシーンは、どれも美しくて、自分の子ども時代にこだわりや思い入れが強い観客なら、心の琴線をくすぐられるだろう。智史がはじめて出会う花梨が眠っている姿であったことは後々の伏線でもあり、トラッシュ(犬の名前)の死は子どもたちの別れや花梨の運命の予兆のようで、胸を衝かれる。


子ども時代の三角関係の結末として見るなら、大人になってからの、とくに佑司のポジションには不満をおぼえる。また、これは私見に過ぎないが、(女の子ひとり、男の子ふたりの)三角関係においては、女の子はどちらとも結ばれてはいけないのではないか。純粋に美しい悲劇として昇華させて欲しかった。(私は、原作は読んでいない)

本編でえがかれる、死と眠りと再生の連鎖。その展開を、もしかしたらあるかも知れないファンタジーとして受け止めるか、いささか宗教がかったものと見るかは、ぎりぎりの境界線だと思う。


パンフレット、600円。
子役3人(黒田凛、深澤嵐、桑代貴明)が揃ってのインタビューが見開きで載っている。

(劇中で佑司が描いている画は、川山等というひとによるもののようだ)


余談だが、この映画の長澤まさみと、「いちばんきれいな水」の加藤ローサは、もしかして同種の病気なのか(笑)。あんなに眠っていても、どちらも、よごれた感じが皆無だし。




関連の過去ログ。
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20070516/p1