丸美屋食品ミュージカル「アニー」を観劇

5月6日(日)は、青山劇場で、丸美屋食品ミュージカル「アニー」を観劇。

今年の「アニー」は、当初、観劇予定は立てていなかったのだが、チケットの一般発売からしばらくして、某所で出戻った(?)らしい良席を入手出来たのを幸い、東京公演の千秋楽(=青山劇場での最終公演)のステージへと足を運ぶことに。

天気は、午前中から雨。こどもの城に着くと、まず、傘立ての空きを探した(空いててよかった!劇場に、折りたためない傘を持っては入りたくないものである)。


公演プログラム、2000円。

4時30分開演。
ロビー表示のタイムテーブルは、
一幕、1時間35分。休憩、15分。二幕、1時間5分。

上演時間は長くなる傾向。ジョエル・ビショッフ氏は、2001年に「アニー」を演出するに際して、演劇誌のインタビューで、2000年の(篠崎版)「アニー」のことを上演時間が長いと批判していたが、それよりもはっきりと長い上演時間になった。


トゥモロー組の出演回で、アニー役は、栗原沙也加さん。

けれんみのないオーソドックスな造形で、うた声もきれいに出ていた。ときどき舌足らずになって甘えたように聴こえるセリフも、女の子としての愛らしさとしてプラスにはたらいていた。
あるいは穿ち過ぎかも知れないが、演出家は、こういうアニーが好きなのかな、と思う。(観劇前に、メイキング番組や、ホームページなどで見た印象からの期待値をかなり上回って、アニーとしては充分に魅力的だった)

近年は、「アニー」を見るとすれば、年にいちどきりのことだから、アニーの出来がいいのは、素直にうれしい。

舞台は、細かい変更で新鮮さを打ち出しているのが窺えたし、アニーの衣裳替えが増えていたのは、二幕のパーティーの場とカーテンコールとを「ハレ」と見立てたと解釈してもよさそうだし、また、よく考えれば、眠れたかどうかはともかく、一夜明けた訳だから、翌日も同じ服を着ているほうが、不自然といえば不自然だったともいえる。
ただし、その分、アニーのトレードマークであるあの赤い衣裳を着ている時間が減ったことにはなる。


話題のひとつは、第一幕の、ロケットのシーンの前に、ウォーバックスのソロナンバーである「Why Should I Change a Thing?」が新曲として挿入されたこと。

ウォーバックスに感情移入出来る世代、性別の観客(私も、しかり)にとっては悪くないが、ただ、ジャンルとしては、ジュニアミュージカルの範疇で捉えられている日本の「アニー」に、この曲が必要かどうかの判断は、むずかしいところ。
訳詞のせいなのか、取ってつけたような印象がなきにしもあらず。

この新曲でいちどウォーバックスに観客の注目を集めることにより、孤児のアニーとかつて孤児だったウォーバックスのドラマ、という部分は強調されている。ウォーバックスの心境がよりクローズアップされることで、一幕の最後の、上手にアニー、下手にアニーを見つめるウォーバックス、奥にウォーバックスを気遣うグレース、というトライアングルの幕切れがインパクトを増したことも、確か。

(むかしの篠崎版「アニー」では、一幕のラストシーンで幕を切るのはアニーひとりだった。「親を探し出せばあの子を失う。・・・」をうたってウォーバックスが退場すると、グレースもその場をあとにして、アニーが「それで、ウォーバックスさんがいうには、2、3日中にお父さんお母さんに会えるって」と声に出しながら手紙を書き了えて、メイビーをうたって幕が下りるという流れ)


グレース役の岩崎良美さんが、シーンによってセリフのトーンを抑えて、落ち着いた雰囲気を出していたのが、印象的。

また、アニー以外の子役では、ケイト役の飯塚萌木さんが、出色。とくにダンスシーンでは目を惹いた。


タップキッズのシーンは、タップの神様が課題(?)のステップを踊ってそれをタップキッズがこなすのではなくて、指名されたタップキッズが踊って、それを見て他のメンバーがこなす、という趣向になっていた。


カーテンコールの曲は、「アニー、アニー」と「トゥモロー」。


観劇回は、通常のカーテンコールのあとに、幕前で、(ウォーバックス役の目黒祐樹さんによる)千秋楽のあいさつと子役たちの紹介(タップキッズ→[トゥモロー組の]ストリートチャイルド→孤児たち→アニー→[スマイル組の]ストリートチャイルド→孤児たち→アニーの順で、孤児たちは個別の役の紹介はなく、芸名の紹介もなし)。そのまま幕を上げて、28人の子役による「フリードレス」が披露され、トゥモローをうたって幕が下り、そのあとまた幕が上がってもういちどトゥモローをうたって、了。
最後のオーケストラ演奏が終わったのが、7時45分。


(客席は、私がいた座席の近辺に限っても、1階席前方の端の方に、若干の空席が見られた)

最初の2001年のあの退屈な舞台からすれば、ジョエル・ビショッフ版の「アニー」もかなり面白くなって来た。ハニガン、ルースター、リリーの3人の場が、一幕と二幕の両方にあるのは、やや難だが(オリジナルとはちがっても、ルースターとリリーの登場を二幕からにしていた篠崎版の潤色はよかったと思う)。


総じて、舞台は、値上げされたチケット代以上に楽しかったので、買う予定のなかったCD(2000円)も購入。
終演後、劇場の外に出ると、雨は上がっていて、しっとりとよい心持ちだった。


なお、プログラムを見ると、「アニー」は、2008年の上演もすでに決まっている模様。