放浪記(帝劇) 千秋楽


9月28日(木)は、帝国劇場で「放浪記」を観劇。

この日、千穐楽。午後1時開演。
2階席では、S席の団体客の到着が遅れて、開演後に多勢さんが入場。私の席位置への影響はほとんどなかったが、見えないと、文句をいっているお客さんもいた。

さて。行商人の子役は、竹内祐稀ちゃん。(初日と1800回が今津凪沙ちゃんだったのだから、楽に別の子が来るのは順当だ)

この、竹内祐稀ちゃんが、上手い。ごはんを食べながら、箸を握った右手の甲で何度も口を拭うしぐさに工夫が感じられたし、目に表情があって、笑うとプラスアルファの愛嬌が出る。佇まいも芝居の空気にとけ込んで見え、セリフも明瞭。貧しい行商の子を演じながらも、どことなく明るい雰囲気があって、尾道の場のいいアクセントになっていた。

この舞台は、もっと若い頃に見ていたとしたら、何度も足を運びたいとまでは思わなかっただろう。
有名な森光子さんのでんぐり返しの前に、絵描きの藤山武士は、でんぐり返しをする布団を整えているとか、世田谷の家の場では、(日夏京子が)ひとりで雑誌を出してもパンフレットだが林芙美子とふたりなら同人雑誌になる、と白坂五郎の思惑をしゃべらせておいて、その後の、女性芸術の原稿をめぐる日夏京子との確執でも、林芙美子を悪役にしていないなど、前後のシーンを関連づけて見て行くことで、これからも観劇の都度、新しい見どころに出逢えそうだ。

劇場についていえば、帝劇がゆったりして、いい。(芸術座より)客席から舞台は遠くなったが、大劇場は席位置によって印象が変わるから、繰り返し見る面白さは増したし、キャパシティが大きい分、チケットも取りやすかった。

千穐楽だからか、森光子さんのカーテンコールが、普段より長いようだった。
それにしても、あのカーテンコールは、すごい。森光子さんが客席へまんべんなく丁寧に視線を送って行く、その間、場内は水を打ったように静まり返り、まるで荘厳な儀式のようでさえある。

この日は、帝劇公演の千穐楽とあって、千穐楽カーテンコールがついた。

(通常の)森光子さんのカーテンコールが終わったあと、下手側緞帳前に、丸山博一(上野山光晴役)さんが登場して、客席へ挨拶。帝劇支配人に替わって御礼云々…の件りでは、「芸術座」といいかけるひと幕もあった。
準備が整ったところで緞帳が上がって、扮装のままの出演者一同勢ぞろい(もちろん、子役は、今津凪沙ちゃんも並んだ)。
(下手端にいる)司会の丸山博一さんの紹介で、いちばん前の列に並んだ15人のうち、主要キャストの11人が、順番に挨拶。11人の並びは、下手側から、
青木玲子(村野やす子役)さん、中島久之(香取恭助役)さん、大出俊(福地貢役)さん、大塚道子(芙美子の母・きし役)さん、山本学(安岡信雄役)さん、森光子(林芙美子役)さん、奈良岡朋子(日夏京子役)さん、米倉斉加年(白坂五郎役)さん、斎藤晴彦(菊田一夫役)さん、有森也実(悠起役)さん、深江章喜(田村伍平役)さん。
青木→深江→…というように、両脇から中への順番で、それぞれに気のきいた挨拶あって、締めが森さんという流れ。
初演のとき、いい舞台にしようということより、たくさんのお客様に来て欲しいと思った。舞台の最後に、机にもたれて寝ているときには、もう自分のセリフは全部終わっているので、いつもお客様に感謝している。…森さんはそんなことをいっていた。

客席上手、下手、正面へと、オールキャストで3方への礼あって、
千穐楽カーテンコールの幕が下りたのは、午後5時2分頃であった。