第五回亀治郎の会

国立劇場小劇場で、第五回亀治郎の会を観劇。

8月4日(金)昼の部 1時開演と、8月5日(土)夜の部 5時半開演を見た。

上演時間は、「奥州安達原 -環宮明御殿の場-」が、2時間。30分の休憩を挟んで、「天下る傾城」が40分。(じっさいは、休憩が30分強あった模様)

公演プログラム(パンフレット)、1500円。
プログラムというより、本の体裁。
半分が、今公演のいわゆる「筋書き」で、あと半分が、5月末から6月の欧州公演の旅日記(亀治郎丈と鹿渡直之氏筆)と小曽根真氏との対談。両開きで、「歌舞伎 奥州安達原」と「歌舞伎 欧州旅日記」と題されていて、奥州と欧州をかけてあるようだ。寄稿は、三谷幸喜香川照之内野聖陽、坂元健児、安福毅、の各氏。

このプログラム、千穐楽(8月6日)当日に購入すると、千穐楽公演後に行なわれるサイン会に参加出来るとのこと(だが、私は6日は観劇しないので、どうでもいいわいなァ)。

なお、来年の第六回亀治郎の会は国立劇場大劇場で開催、と告知されている。


「奥州安達原 -環宮明御殿の場-」
は、石川耕士補綴で亀治郎版の台本を作成、2時間の上演時間にまとめたものとのことで、袖萩とお君の出からはじまるのではなく、その前の件りが付いている。つまり、亀治郎丈は、まず桂中納言として登場し、袖萩になり、入れ替わって桂中納言じつは安倍貞任となる。
これはなかなか面白かった。
たとえば、袖萩の父の直方が腹を切るのに、どうしてあんな梅の枝と矢の根をくっつけたものを使うのかと不審に思うところだが、そのあたりの(分かったような分からぬような(笑))経緯も演じられて、それから袖萩の登場になる。

ただ、袖萩と貞任のニ役を兼ねるためか、お君と貞任との父子の場面が簡略化されていた(のは、いささか不満に思うが、同じ役者が袖萩でたっぷりやっている訳だから、仕方がないか)。

お君の下田澪夏ちゃんは、目がぱっちりと大きい子で、その目の配り方が秀逸。姿も愛らしいので、浜夕のセリフにも説得力が増す。袖萩への気遣いが終始はっきりと目に表れているところや、脇に控えていても芯で演じている役者に目を注いでいるなど、シーンごとに、その目に湛えるものがあって、見どころが多い。
5日夜の舞台では、大きな目をしばたき、鼻を何度もすすり、袖萩といっしょに泣いていて、リアルに涙ぐむ姿にはおどろかされた。感受性の強いお子なのかしら…

この子役だけで、充分、チケット代に値した舞台だ。
(6月の三越劇場のお光は、いかばかりであったろうか…)

「天下る傾城」
赤毛のお獅子。
老けた禿さんふたり(扇乃丞丈・京紫丈)に、とぼけた味わいがあって面白かった。




余談。
下田澪夏ちゃんて、1月の「信長」では片岡芽衣ちゃんとダブルキャストだったのだから、あのくらいのサイズな訳で(と「弁慶」のあこめを思い浮かべる)、舞台から受ける印象よりも小さそうだ。4月歌舞伎座、5月歌舞伎座、6月三越劇場、7、8月瓜生山歌舞伎・亀治郎の会…と出ているのだね。(他には出てないかしら?)