「弁慶」千秋楽 (新宿コマ劇場)

7月27日(木)は、新宿コマ劇場で、松平健主演「弁慶/唄う絵草紙」の千穐楽を観劇。
13日(木)に見て以来(http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20060720/p2)、2度目。


午後1時開演。

森光子さんの来場もあって、いかにも千穐楽らしい雰囲気。ちなみに、7列56番の席にいらした(たしかに、見やすそうな席である)。
2回目の休憩のあと、「唄う絵草紙」の開演前には、森光子さんがいることが客席に広まったらしく、立ち上がって見回すお客さんも少なからずで、かなりざわついていた。


(順序が逆になるが、)「唄う絵草紙」が、千穐楽ならではの盛り上がりを見せ、大いに楽しんだ。
大詰めは、ミラーボールのなかから登場して、マツケンサンバⅡ〜マツケンサンバⅢ(間奏の振付けが、格好いいね)とうたうフィナーレ、の流れだが、普段はカーテンコールには登場しない玉虫・今参りの子役もふたり並んで上手側に登場。

松浦結帆ちゃんと渡邊歩美ちゃんは、身長がお揃い!だった。
Tシャツ(?)の上にマツケンサンバのハッピを着て、サンバ棒を持って、足もとは白足袋に草履。扮装ではない髪形が、かわいかった。

座長さんから宣伝を兼ねた挨拶があって、森光子さんと龍虎さんがいらしてます、と紹介(森光子さんにはライトまで当てていた)。

これで終わりかと思いきや、拍手のなか、再び幕が上がると、マツケンサンバⅡ〜マツケンサンバⅢのアンコールがあって、フィナーレは、あこめ役の子役ふたりも登場して、オールキャスト勢ぞろい。この日のあこめ、松岡瑠奈ちゃんは、(ダブルキャストの)片岡芽衣ちゃんよりひと回り小さい様子。今参りのふたりは、今度は、母親役の紺野美沙子さんといっしょに舞台のほぼ中央に。
座長さんに促されて、相手役の紺野さん、鈴木ほのかさん、(傀儡の頭領役)峰岸徹さんからもひと言ずつあって、その後、さらに幕が上がるも、午後5時12分頃に終演。

共演の方の挨拶の内容からすると、3月御園座、7月新宿コマ劇場と上演された「弁慶」はこれでひと区切りということでしょうか…(10月の大阪新歌舞伎座公演は、「暴れん坊将軍」と発表されている)。


「弁慶」について、少し書いておこう。
「弁慶」は、時代劇ミュージカルのねらいだが、弁慶をはじめとする主要登場人物がうたうシーンはほとんどない(弁慶と子役がうたう今様と、義経静御前による短いナンバーくらい)。

一般的な大劇場の商業演劇では、暗転になったり、場面転換をつなぐためのカーテン前や花道での芝居、あるいは、ストーリーを運ぶためのナレーションや説明的なセリフに該当する部分を、傀儡に扮した歌い手やダンサーたちが担って、うたと踊りで進行役をつとめるかたちだ。傀儡たちは本筋のストーリーにも絡んで来て、狂言回しの役どころ。鈴木ほのか、渚あき、といったミュージカル女優に、人気の真島茂樹が、傀儡集団のアンサンブルの軸になる。

面白い舞台に難をいえば、音楽の一部が、「新・乾いて候」にそっくりだった。「新・乾いて候 そなたもおなじ野の花か」と同じひと(甲斐正人)が担当しているから仕方ないのかも知れないが、音楽が過去に上演された別の舞台を想起させるというのは、いかがなものだろうか。

左右の花道の上部にまでセットを組み、俳優が出入りするので、座席が前方に過ぎると、誰れが何をしているのか分からないことにもなる。


二幕になってまもなくの屋島合戦。扇をかかげた戦うらないの船に、玉虫が今参りとともに乗り込み、敵方にいる弁慶に、遠目ながら娘の今参りの姿を見せようとの場面は、なんともよいつくり。

(玉虫、今参り役の)松浦結帆ちゃんを歌舞伎以外の舞台で見たのは、この日がはじめて。これだけでも、収穫といえた。渡邊歩美ちゃんよりは、ややおっとりした感じの今参り。
 いちばんうつくしい葉を、ととさまに

今参りをダブルキャストで演じた両嬢は、いまのところ、大歌舞伎の配役では松浦結帆ちゃんに分があるが、一般のお芝居では渡邊歩美ちゃんに上手さが見られる。ともに、今後の、さらなる活躍が俟たれるところだ。