ブックレビュー (8タイトル)



ブックレビューを、とりあえず、8タイトル。

大方、最近読んだものから、新しい順で。



棋士瀬川晶司 61年ぶりのプロ棋士編入試験に合格した男」(日本将棋連盟、1600円税別)

私は意地悪なので、プロが4つ勝てばいい、と思っていた。本には『サラリーマンの挑戦!』なんてコピーがついているが、サラリーマンには手が届かなくてこそのプロなのに…。編入試験実現の背景に理事選との絡みがあったこと、スポンサーとの関係や、新聞記者の後押しが多分に寄与していたことが分かる。



読売新聞社会部「拝啓 渥美清様」(中公文庫、648円税別)

親本は、2000年3月に中央公論新社から出ていて、その文庫化。もともとは、読売新聞都内版に連載されたもの。田所康雄こと俳優渥美清について、プライベートから俳優仲間まで、交流のあったひとたちへのインタビューでそのひととなりに迫った本。面白い。



藤堂志津子「人形を捨てる」(新潮文庫、476円税別)

直木賞作家の自伝的エッセイ。両親との関係や、作家になる経緯など、どれも読ませる。



金子雅臣「壊れる男たち セクハラはなぜ繰り返されるのか」(岩波新書、740円税別)

これを読むと、セクハラは絶対になくならないな、と思う。セクハラの被害者が相手に対して常に社会的な上下関係やお互いの立場を意識しているのに、加害者(多くは男)側は対等な男女間の駆け引きだと思い込んでいる都合のよい無自覚さ。弱い立場にある女性に手を差し伸べることを男の甲斐性とするような考えの根強さには、うんざり。未読の方はぜひ読んで、うんざりしてみよう。



朝松健「暁けの蛍」(講談社、1800円税別)

世阿弥一休宗純という取り合わせが興味を惹く小説。が、読んでみれば、期待外れ。世阿弥足利義満の寵童だったということにこだわる限り、所詮は、杉本苑子の作(「華の碑文」)には及ばないと思う。若年期の一休をえがいた箇所は、面白い。



東直己「英雄先生」(角川書店、1700円税別)

元ボクサーのいいかげんな高校教師が、成り行きでヒーローになるってストーリー。東直己だから、それなりに面白い。カルト宗教を絡めたところがミソか。



東直己「ライト・グッドバイ」(早川書房、1700円税別)

ススキノ探偵<俺>シリーズ。冒頭に登場する、本が売れている哲学教授って、誰れがモデル?・・・うるさい日本の、人間嫌いの某国立大学教授かしら。



本田由紀 内藤朝雄 後藤和智「「ニート」って言うな!」(光文社新書、800円税別)

昨今、マスコミでもてはやされている「ニート」観に反論した本。この本がいわんとしていることには全面的にうなずける。が、方向性としては、若年労働者、失業者の置かれている状況や、若者が正社員として採用されにくい労働環境や企業の姿勢、労働・採用の実態など、現場の事情を具体的に伝えるべきではなかろうか。私は、それが読みたいと思う。