緒形拳を追いかけて



垣井道弘「緒形拳を追いかけて」(ぴあ、2400円+税)

を読んだ。

著者は、緒形拳と近しい映画評論家で、元女性誌記者。



緒形本人との交流、インタビューをベースに、日本を代表する俳優のひとりである緒形拳の生い立ちから最近の仕事までを時の流れに沿って書いている。緒形拳というひとのこれまでの仕事を振り返って再確認するという意味では、巻末の資料(緒形拳の全仕事 舞台・映画・TVドラマ)も含めて有意義だが、著者が対象と親しいからか、あるいは緒形拳が俳優としてまだ第一線にいるせいか、批評的な視点が弱い、もしくは突っ込みが浅い印象。読み通すと、冗長に感じるのだ。



舞台、とくに新国劇時代のことはほとんど知らなかったので、その件りは興味深く読んだ。新国劇の舞台に出つづけながら、大河ドラマに主役、準主役で2年連続して出演するあたりは、いまではあり得ないスケジュールだろう。

が、もう一歩踏み込んだことを知りたい身としては、いささか欲求不満でもある。おそらくは、緒形拳の語らない、語りたくないことは書かないというのがこの本のスタンスであり、限界でもあるのだろう。