坂田藤十郎襲名披露 壽初春大歌舞伎 夜の部



1月3日は、歌舞伎座で、坂田藤十郎襲名披露 壽初春大歌舞伎の夜の部を観劇。



夜の部は、菊池寛作の「藤十郎の恋」、坂田藤十郎襲名披露「口上」、「伽羅先代萩 御殿、床下」、「島の千歳」「関三奴」。

4時45分開演で、この日終演は、9時12分頃。



なんといっても、「伽羅先代萩」である。



中村虎之介くんは出来物だ。声がいい。張りのある高くきれいな声のセリフ。そして、きっぱりとして見映えのよい挙措。さむらいの子はかくあるべし、千松そのものといった感じ。加えて、御曹司らしいプラスアルファ(表情や愛嬌)があって、子役ながらに、華も味もある。鶴千代君よりひと回り身体が小さい分、けなげさも増して、格別。

たとえば、鶴千代と千松が、サイコロを振って遊んでいるだけでも、簡単ではない芝居だが、そこでの千松の目配りや、居ずまいがとてもさわやか。



中村鶴松ちゃんの鶴千代は、泣き伏す政岡を気遣って座を立ち、もう泣いてくれるな、おれが食べても乳母が食べずに死んだら悪い、千松そちが死んでも悪い…、と幼君ながらも太守の器量を示すところが、いちばんの見せ場。身体のこなしだけで、ちゃんとお殿様であることを見せていた。



子役ふたりが上手いから、終始、緊張感たっぷりで、息をのむ見ごたえの一幕。(テレビ中継だとカメラワークのせいで、かえって平板に見える。子役ふたりのすばらしさは、やはり客席で見てこそ)



かなり早い時点から、藤十郎丈の政岡は目元の朱が流れて「血の涙」になっていた。



「床下」の仁木弾正(幸四郎丈)を見ようとて、花道が見渡せる一階二等席での観劇だったが、こちらも堪能。あのネズミがすっぽんに飛び込むタイミングは見事なものだね。

※[追記] 件のシーンのすっぽんは、こんな仕掛けだ。



夜の部の最初の「藤十郎の恋」は、たくさん役者が出ているので、誰れがどこに出ているのかをチェックするだけでも楽しい演目。