夜市



恒川光太郎「夜市 よいち」(角川書店、1200円税別)



第12回日本ホラー小説大賞の大賞受賞作。

日常と隣り合わせに、もしかしたらあるかも知れない異世界との往還をえがいて巧みなホラーファンタジー。何かを得るために何かを売る、という夜市の小説的仕掛けと、先が読めない面白さで、著者の世界に引き込む。

「弟」が路地で少女と出会い少女の兄を助けることになる挿話が、とても上手く、効いている。



よく出来たいい小説。なのに、選評での選考委員の褒め言葉が、なんだか芝居がかっていて、せっかくの作品を安っぽく見せている気がした。



受賞作の他に、同じ系統の「風の古道」を収録。