子役という仕事 その成功の方程式
文化の日は、にゃんころげ(飼い猫)と寝て、本を読んだら一日が終わった。
読んだのは、
香取俊介「子役という仕事 その成功の方程式」(ジュリアン、1500円税込み)
シナリオライターである著者は、数年前に、「サンデー毎日」に4週にわたり、子役をテーマにした記事を連載したことがあった。期待して読んでいたら、あっさり終わってしまい、拍子抜けしたものだが、その後も広く取材を重ね、件の連載を大幅に発展させ、ものしたのがこの本ということのようだ。
読み応えのある本である。
「その成功の方程式」というサブタイトルはどうかと思う(子役の成功に方程式などはないだろうし)が、偏らない視点で、子役や子役業界のいま、を概観している。
じっさいに子役を択び、使い、育成、マネージメントしているひとたちへの取材に基づく部分が、読ませる。
裏話的な部分は、イニシャルになっている事務所も大体見当がつくだろうし、ドラマの降板話も分かるひとにはすぐに分かる。
モデルエージェンシーや芸能プロダクション系の子役がシェアの多くを占めるようになって来たなかで、旧来型の児童劇団はどういう姿勢で臨んでいるのか、ということがテーマのひとつとしてあるようで、老舗といえる主な児童劇団の主宰者や担当者の考え方を読み較べられるのが、おもしろい。
子役業界の全盛期は1980年代、というのは、いささか意外であった。いまのほうが子役になりたい子、させたい親が多いのではないかと思っていたのだが、少子化で少ない子どもを取り合うという状況は、教育産業等とかわらない。
「サンデー毎日」連載時の榎園実穂さん、(いまは芸能活動はしていないらしい)比嘉タケルくんのほか、平田実音さん、小堀陽貴くん、左川桃子さん、小清水一揮くんなどの具体的な体験談も登場する。
子役は親とセットであり、子役の問題はお母さんの問題だと多くの関係者がいう。引いていて(出過ぎずに)見守る親、を良しとする。子役は親を見ろ、と。
(これは、ファンの立場でも同じかも知れない。子役がたくさん出るミュージカルなどでは、親を見て、応援のし甲斐がある子かどうかを見分けたりするので)
子役は常に買い手市場であること。子役は「仕事」であっても「職業」にはなり得ない。やめ時が大事、といった言葉は、賞味期間の限られた子役という存在の難しさを象徴している。