審判 (加藤健一事務所)



9月28日(水)に、本多劇場で、加藤健一事務所「審判」を観劇。



この日は、午後1時開演。

上演時間は、2時間30分。



俳優 加藤健一氏の代表作とされ、再演を重ねている芝居だが、…今回はじめて見た。



幕開きと幕切れを除けば、音楽すら流れず、加藤健一演じるアンドレイ・ヴァホフがひとり舞台で語りつづける。第二次大戦中、ドイツ軍の捕虜になり、修道院の地下に閉じ込められた7人のロシア兵士。衣服も逃げ場も食糧もないなか、仲間の血肉を喰らって生き延びたふたりのうちひとりは発狂するが、ヴァホフは正気を保ち、法廷で陪審員に向かい、救出されるまでの60日間の出来事を語る。



演るほうも大変だろうが、これは、見る客も覚悟(準備)が必要な2時間半である。

人が人を食う話で、劇中、笑うような場面は皆無。動きのない舞台。休憩なしだから、客席は終始緊張と静寂を強いられる。



(年配客の多い)客席の雑音は、芝居よりおもしろいくらい。観客のおなかが鳴る音はそこかしこから明瞭に聴こえる。あくびをしようと息を吸い込む声まで。飴をなめようとかばんを探り、やっと口に入れたかと思えば、たちまちむせて咳をするご婦人。隣席の連れにもたれて眠り込んだままのひと。客席に響くいびき。誰れかが座り直す度に、まぁよくきしむ本多劇場の椅子。隣のお客さんなんて、最後の30分くらいは、呼吸が荒くなっていたが、大丈夫だったろうか?

本当にご同情申し上げたい。



かくいう自分もまた、耐え難い2時間半だった。

ヴァホフのななめ後ろからの照明で少し明るくなったとき、時計を見たら、まだあと1時間もあるのか!と。思った途端に、集中が切れ、このままだとエコノミークラス症候群になりはしないかとの懸念が湧いたくらいの苦行だった(体調が悪いときは、とても見られない舞台だ)。



観客の好みや感受性はさまざまなれど・・・平板で退屈。トータルでは四季の舞台をいちばん多く見ている身には、カトケンのセリフ回しはもうひとつ聴きづらい。平々凡々とした印象は役作りだとしても、もっと「何か」を見せてくれてもよいのではないか。

すごいとは思ったが、芸(あるいは趣向)がなさ過ぎ。





公演プログラム、800円(例によって、加藤健一サイン入り)。