「変わる商業演劇」から
4月から、朝日新聞夕刊に、毎週1回(火曜日)掲載されている「変わる商業演劇」という連載記事が面白い。
今日の大劇場が直面している問題点や、商業演劇のいまを浮き彫りにして、分かりやすい。
(以下、青字は記事からの引用)
先ごろ閉館になった芸術座が主導して来たともいえる女座長芝居に、今はかげりが落ちている。観客動員力が落ちている。
複数座長芝居、あるいは群集劇になっていく。
劇場にも、改築や売却の波。
コマ・スタジアムは3月、梅田コマ劇場を阪急電鉄に売却した。11年間、毎年17億円も赤字が続いたからだ。赤字の主な要因は梅田コマ劇場だった。
リストラで、社員を3分の1に削減するなか、新宿コマ劇場は氷川きよし公演に光明を見出す。
そういえば、前回の氷川きよし公演は大阪では新歌舞伎座での上演だった。売却された梅田コマは、ここでも利がなかったといえようか。
その新歌舞伎座も、ダイエーグループのため、産業再生機構の主導で売却されそうだ。という。
7月に新歌舞伎座で座長引退公演をする杉良太郎は、芸能活動はつづけ、舞台も脇役には出るつもりだ。「が、誰も参加を呼びかけてこない。舞台に厳しい僕がうるさいのでしょう」。
団体客事情も変化するなか、
商業演劇にとり団体客は生命線であり、値引きを生み、舞台への関心の低さの温床にもなる。妙薬であり毒薬だ。
と指摘する。
「定価」でチケットを買って観劇することがほとんどの立場からすれば、大劇場での商業演劇の多くは、そのチケット代に見合うほどに面白いかどうかは、じつに微妙なところではある。
(団体客と較べて)チケット代での不公平感を抱いているひとは少なくないと思うし、演劇鑑賞のつもりで来る個人客と物見遊山の団体客とのギャップは、埋められない溝だろう。お芝居での共演者が目当ての一部観客にとっては、歌手座長の歌謡ショーは、内容いかんでは、ただ苦痛な時間になる。
かつてお正月は山本富士子でおなじみだった帝劇も、すっかりミュージカル中心のラインナップが定着した(いまでも座長女優といえるのは、森光子、佐久間良子、浜木綿子ぐらいか)。東京宝塚劇場は、改築後は宝塚歌劇の専用劇場になった。
現役の座長女優たちが第一線を退く頃には、商業演劇もすっかり様変わりしているのだろうか…